氏 名 神 谷 昌 宏
平成18年10月18日(水)〜20日(金)の3日間、建設水道委員会のメンバー6名と当局2名の合計8名で行政視察に行って参りました。
視察項目は以下、視察地ごとに報告します。
宇都宮市内を流れる川は、落差が大きく、水の流れが速いのが特徴です。特に夏の雷雨は激しく、年間1,500mmの降水量の半分が、6月7月に集中しているとのことでした。市内中心部を流れている利根川水系の川に釜川があります。雷が鳴るとよく氾濫するので、別名”あばれ釜川”とも言われており、年3回〜4回氾濫し甚大な被害が発生していました。このため、150億円と19年の歳月をかけて、釜川を全国初の2層構造河川に改造しました。釜川の工事は「1期工事:トンネル放水」「2期工事:2層工事」「3期工事:水辺環境の整備」と3期に分けて行い、特に3期工事では、釜川にベンチやバーコラなどを配置し、水辺環境を整備し、親水機能を持たせていますので、市民に親しまれ、全国から見学者が訪れているとのことです。 通常、河川の氾濫を防ぐためには河川に流れる水の量を増やす(体積を増やす)ために、河川を掘り下げたりするのですが、この釜川が市内中心部を流れていることもあって、単に治水だけを目的とした河川改修ではなく、まちの美観ということに配慮した取り組みになりました。その結果、今回の視察項目であります<2層構造河川>という形にしたものです。
2層構造河川とは、上段と下段の2階建ての構造になっているものです。すなわち、川の直下に、新たにトンネルを掘った2層構造になっているのです。2層のうち、下段水路は治水専用のトンネル河川であり、上段水路は親水機能と若干の治水機能を持たせた河川です。大雨等で上段の流量が多くなった場合には、上段水路の横から下段水路へ溢水させ氾濫を防ぐ構造になっています。
宇都宮市は起伏にとんだまちであり、河川の落差も大きく、水の流れは極めて速く、これが年に数回も氾濫するため、また特に中心市街地を流れる川であるがゆえに、河川から溢れ出る水を下段のトンネルに流し込むため、川の下に深さ3m前後のトンネルを掘った2層構造の河川というユニークな方法を採用されたもので、1つの事業で「治水」と「まちの景観整備」という2つの意義を生み出す発想は、今後の刈谷市政全般において常に見習わなければならない点だと感心しました。
また、この宇都宮市においては当初の視察項目にはなかった事柄ではありますが、大変興味深い事業についての紹介がありました。それは『若年夫婦世帯家賃補助制度』というもので,若年層の中心市街地への定住を促進し,活力あるまちづくりを進めるために実施されていました。制度の概要は、中心市街地以外の区域からあらかじめ決められた中心市街地内にある民間賃貸住宅へ転居又は転入した,夫婦のいずれもが満40歳未満の若年夫婦世帯に対して,月額3万円及び60月を限度に家賃補助を行い,更に,義務教育終了前の子供がいる場合は,月額3万円及び36月を限度にこれを延長するというものです。全国的な課題となっています[中心市街地の活性化]。その対策としては、何と言ってもその地域への定住人口の増加ということが必要ではないかと思います。そういった意味では今回のこの『若年夫婦世帯家賃補助制度』、刈谷市においても検討してみる価値があるのではないかと思います。
この城山公園は、敷地面積9.5ha(計画面積11.5ha)で、主な施設としては4つに分けることが出来ます。
特色としては、慶応4年(1868年)戊辰戦争白河口の戦いで落城した小峰城などの復元によって、公園そのものの景観とともに、石垣や櫓など文化財としての価値が高まっています。このため、現在、多くの観光客が歴史と文化に触れることができる公園として利用されていました。復元された三重櫓には、年間約6万人前後の入場者があり、市民のみならず、首都圏や北関東を中心に遠方からの観光客も多い訪れています。また、白河バラ園にも2万人前後の入園者(6月・10月のみ)があるとのことです。現在、この公園はあくまで[都市公園]という位置づけでありますが、国指定の史跡への動きもあるとのことです。しかし国指定の史跡ということになりますとおのずと規制が厳しくなり、市民が親しむ公園としての制約を受ける可能性がありますので、その選択については慎重に判断しなければならないとのことでした。
この城山公園の核はなんといっても[小峰城]であると思います。最近見たテレビ番組にて、「岐阜の墨俣城は、実際の歴史上は小さな砦のような建物のはずなのだが、存在しなかったような立派な城を多額の費用を掛けて造っており無駄遣いだ」との指摘がありました。その点この小峰城は史実に基づいた城であることに大きな意義があると思います。ついつい刈谷市の亀城公園との比較をしてみたくなるのですが、この城山公園の場合、史跡を保存した文化的・歴史的に意義のある公園だからこそ、外からの観光客が訪れたり、お客様が見えた時にお連れすることの出来る市内の観光名所となっているのだと思います。一方、亀城公園の場合はやはり刈谷市民が寛ぐ空間という範疇を抜けきれないと思いますし、またそれで良いのだとも思います。 この城山公園の後、白川市の『―わが国最古の公園―南湖公園』も訪れました。この公園は1801年、白川藩主松平定信が新田開発と灌漑用水を目的として造り上げた人造湖です。雄大な那須連峰、関山を借景とした回遊式自然庭園として、湖畔の松や吉野桜、楓が四季折々の美しさをたたえ、市民の憩いの場として親しまれているそうです。
この公園の中にある『翠楽苑』を見学して、刈谷市亀城公園内にある十朋亭について考えさせられました。この『翠楽苑』には書院造りの『松楽亭』や『秋水庵』などがあり、建物の周りを囲む日本庭園を眺めながら茶道・華道・句会・歌会などを楽しむことができます。これらは周りに美しい日本庭園が配されているからこそ価値の高まるものであると思います。そういった意味では、現在会議室的な利用しかされていない十朋亭は、今の状態では施設の立地条件を十分に生かし切れていないと感じました。
過去の一般質問答弁において、刈谷市ではレストラーレ構想のアイテムの1つとしてサイクリングロード整備を考えているようでしたので、その先進事例を見るということで楽しみにしていました。今回のサイクリングロード整備は、河川敷等を活用した新設路線と既存道路の改良により、整備実施延長としては13,178mになっています。事業の目的として、@交通渋滞の解消 A環境負荷の低減 Bレジャー・健康志向への対応という事でしたが、この事業に対する私の認識として、@Aの目的はどうも理解できませんでした。他の議員も同じような違和感を持たれたようで、この点について多くの質問が出ました。つまり、「サイクリングロードを整備することが、なぜ交通渋滞の解消や環境負荷の低減につながるのだ、サイクリングロードはあくまで、自然の中を自転車で走ることにより余暇を楽しんだり、その結果健康作りの一助となるものではないのか」という疑問です。どうやら今回の新潟市においては、国土交通省の社会実験を行うことも含めて、『エコ自転車通勤システム』ということに取り組んだようです。その仕組みは次のような流れです。
現在この実験は、本格実施には至っていないようです。その理由としては特に豪雪地帯特有の条件があると思います。夏場の暖かい気候の時はこうした自転車通勤をすることが出来ても雪の多い冬場はやはり、便利で楽な自動車通勤に頼ってしまうのではないでしょうか。このことから、刈谷市においてのサイクリングロード整備事業はあくまで、Bレジャー・健康志向への対応という点だけに絞って、その点において出来るだけ目的達成に向けたレベルの高い整備をすべきであると思います。