政務調査についての所感自民クラブ 神谷昌宏 |
平成16年1月20日(火)〜22日(木)の3日間、自民クラブのメンバー10名(議長含む)で行政視察に行って参りました。 視察項目は
についてであります。 当日は西日本を襲った寒波の影響で、飛行機・JR等の交通が混乱し、特に最終日の三木市については現地に行けるかどうか危ぶまれた状態でしたが、なんとか1時間程度の遅れで到着することができ、昼食時間の短縮や予定時間よりも延長しての滞在などにより、ほぼ当初予定した通りの視察時間を確保することができ、いずれの調査項目も非常に密度の濃い内容で行うことができました。以下、視察地ごとに報告します。 1. 東京都杉並区 青少年センター『ゆう杉並』児童館や生涯学習センターなどのように、どちらかというと児童や壮年・高齢者向けの施設は刈谷市も含め全国的にはよくあるけれども、中学生や高校生を対象とした施設は極めて珍しいと思う。「その年頃の若者が公設のこういった施設に集ってくるだろうか?」「運営はどのように行われているのだろうか?」など、会派内で「刈谷市にも青年が集まれる施設を作ろう」という提案があった時、素朴に感じた疑問でした。 この『ゆう杉並』は大きく分けて次の4つの目的を持っています。
この目的の下、吹き抜けの広いロビー、体育室、音楽スタジオ、鑑賞コーナー、ホールなどがあり、計画の段階から中・高校生委員会が組織され、オープンしてからも運営にあたっているとのことでした。 今日、刈谷市においても団体育成を中心に行われてきた青少年育成活動は壁に突き当っています。そのことは子供会活動や青年団活動の現状を見れば明らかです。これまで子どもや若者はそれらの団体活動の中でいわば「大人になる」ための準備をしてきたはずですが、それらの力が失せた今、それらに変わる新たな居場所づくりが必要になっているのではないかと思います。今回視察した『ゆう杉並』は正にその新たな居場所としての任務を担っているのだと感じました。 視察前に抱いていた疑問について言えば、やはり人口50万人の自治体だからこそ需要があると感じました。従って単独の施設として同種の物を刈谷市に作ることは難しいと思いますが、青少年の新たな居場所づくりのためには生涯学習センター内の一スペースにこういったゾーンを設けても良いのではないかと感じました(音楽スタジオだけでも良いのではないか)。 また、今回杉並区を訪問した目的の1つに山田宏区長にお会いするということもありました。私より2歳年上の46歳という非常に若い区長さんです。衆議院議員を務めた後、選挙区が石原伸晃氏と同じということで(勝ち目がないと思われたのか?)小選挙区で落選以後、杉並区長に転向されました。松下政経塾の2期生ということで、私も松下政経塾地域から日本を変える運動の会員であった時から存じ上げ、活動レポートなども送って頂いていましたので、お会いできることを非常に楽しみにしていました。 思った通りバイタリティーがあり、地方分権・国と地方との関係について額に汗をいっぱいかきながら熱く語ってくださいました。議会との関係は適度の緊張関係で、自分の信念にしたがってぐいぐいひっぱる政治家らしい首長の姿に感動しました。区長との面談は僅か30分足らずでしたので、その話の中身がどうであったかを余り語ることはできませんが、リーダーとしての姿が大いに勉強になりました。 2. 山口県下関市 電子入札制度電子入札制度については神奈川県横須賀市が先進市ということで、本会議の中でも引き合いに出されたり、刈谷市議会からも過去に視察に行ったりしていますが、私は残念ながらその機会がありませんでした。従って今回、その横須賀市のシステムを供用している全国では始めての自治体として下関市を視察できることをとても楽しみにしていました。 電子入札制度導入の目的として「談合防止」ということがよく言われますが、その理由は次のようなものです。談合を防止する有効な手段は「だれが入札したか判らなくさせる」「できる限り多くの業者に入札参加してもらう」ということです。そしてそのためには、指名競争入札より一般競争入札の方がふさわしいのですが、多くの業者が入札参加するとどうしても市役所の側の事務量が増えてしまいます。そこでその『入札業務の効率化』のために電子入札が必要であるということです。 制度導入後の実績としては、これまでの指名競争入札の場合、指名枠12社であったものが、条件付一般競争入札になったことにより毎回30〜40社での入札となり、落札率が以前より10%ほど低下したとのことでした。 導入までの経緯については、平成12年6月に議会の方に『契約問題調査特別委員会』という委員会が作られました。これは当時、入札における談合情報を初め共同企業体の不成立や指名業者選定に関する問題などの様々な問題が発生したことから設置されたとのことでした。その委員会での報告を受けて市役所内部に『入札・契約事務手続改善検討委員会』が設置され、その後僅か一年という短期間で電子入札がスタートしました。これだけの短期間でスタートできた背景としては議会からの後押しと、先進的に進めていた横須賀市のシステムを利用したという点があげられると思います。当時国土交通省は、「システム乱立による混乱を避ける」という考えでシステムの標準化を推進しており、日本建設情報総合センター(JACIC)が標準システムとなる「電子入札コアシステム」の開発を急ピッチで進めていました。それにもかかわらず、下関市が横須賀方式の導入を決めたのは、「電子入札コアシステムがいつから使えるのかがはっきりしておらず、条件付き一般競争入札がサポートされるかも不明だった」からでした。つまり当時としては横須賀方式以外に選択肢はなかったとも言えます。さらに横須賀市が認証・公証システムをASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)化して、他の地方自治体と共同で利用できるようにしたので、コストも大幅に軽減されていました。条件付き一般競争入札の導入による公共事業費削減効果を考えれば、仮に1年後にJACICの電子入札コアシステムに入れ替えても、十分に元が取れる計算であったようです。実際システムに掛かる経費としては当初4300万円(他社の場合約1億円の見積もり)、年間コストは横須賀市への分担金を含めて約1000万円とのことでした。 今後の展開としては、現在は建設工事入札だけで行っている電子入札を物品の購入や委託においても実施してゆきたいとのことでした。 これからの自治体は限られた予算の中で、いかに住民サービスを向上させるかが問われる時代になってきます。電子入札などITをうまく活用する自治体は、業務効率化・コスト削減により、質のよい住民サービスを提供することが可能となり、その反面、こうした取り組みが遅れている自治体およびその住民は、相対的な不利益を被ることになる恐れがあるのではないでしょうか。電子自治体が本格化してくると、こうした自治体間の格差がより明確になってくると思われます。電子入札だけに限らずITの活用度合が自治体の運営に大きく影響する時代を迎えつつある今、刈谷市としても単なる行政改革に止まるのではなく、本格的な電子自治体への取り組みをしてゆかねばならないと感じました。 3. 兵庫県三木市 市立三木養護学校昨年の10月に会派内で『平成16年度の予算編成に関する要望』を話し合う際、昨年まで要望していた「県立の養護学校誘致」という要望に対する市当局の回答が「今後半田市と大府市に県立の養護学校が設置され、刈谷市もその通学圏内であるため、刈谷市内への誘致は難しいと思われます」という厳しいものであったため、「来年度の要望ではその事柄を断念し削除しようか」と私が発言しましたら、多くの議員から「刈谷市ほどの財政的に豊かな市であれば、県の建設を待たなくても、刈谷市立の養護学校があっても良いのではないか、今回は県立養護学校の誘致ではなく市立養護学校の建設として要望しよう」という発言があり、『平成16年度の予算編成に関する要望』の中では「市立養護学校の建設」を提案しました。 「要望はしたものの本当に市立での運営は可能であるのか」その疑問の答えを自らの目で確かめたいという思いで、人口76000人、一般会計約246億円という刈谷市の半分ほどしかない市であるにも拘わらず、知的障害者の養護学校を市立で運営している兵庫県の三木市を訪問しました。 三木養護学校の概要は次の通りです。
施設規模や予算面から見れば、刈谷市でも設置が不可能ではないという印象でした。もちろん教職員の給与は県から出して頂かなければなりませんが、これは通常の小学校・中学校と同じルールですからいわばあたり前のことです。 質疑応答の中、私ども自民クラブの会長が「刈谷市の場合市当局は、養護学校は県に設置義務があるからといって刈谷市としての設置に消極的であるが、兵庫県の場合は市立でも設置可能なのか?」と質問したところ「県設置義務だが、市長の要望があれば市でも設置できる」という回答がありました。 これらの事を含め、刈谷市としての建設に対し大いに意を強くした今回の視察でありました。但し、現在文部科学省では『今後の特別支援教育のあり方』として、「地域における支援体制の確立」「教育、福祉、医療、労働などの枠を超えたネットワーク」などの重要性が示され、養護学校も「特別支援学校(仮称)」として生まれ変わり、地域の小中学校と連携を取りながら地域のリソースとしての役目をより明確に果たすことなどが期待されています。今まさに養護学校のあり方が大きく転換する節目であるとも言えます。その大きな流れも的確に把握をしながら、今回この三木養護学校で見てきたことを、刈谷市内への養護学校建設に向けての参考にしてゆきたいと思います。 |