政務調査についての所感

自民クラブ 神谷昌宏

平成17年1月19日(水)〜21日(金)の3日間、自民クラブのメンバー11名(議長含む)で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 香川県観音寺市 総合型地域スポーツクラブについて
  2. 愛媛県久万高原町 久万農業公園アグリピアについて
  3. 愛媛県松山市 安全で安心なまちづくりについて

であります。

これらの項目について、私自身は一般質問等で取り上げたことはありませんが、会派所属の議員が過去に一般質問でも取り上げた項目であり、特に「(2)愛媛県久万高原町 久万農業公園アグリピアについて」は現在の刈谷市では行っていない取り組みであり、とても興味深く関心がありました。

当日は天候も良く、各種交通機関も順調で、当初予定した通りの視察時間を十分確保することができ、いずれの調査項目も非常に密度の濃い内容で行うことができました。以下、視察地ごとに報告します。

  1. 香川県観音寺市 総合型地域スポーツクラブについて

別添資料:一ノ谷スポーツクラブ組織図

観音寺市は香川県の西端に位置しており、人口66500人ほどの都市です。その中に9の地区組織(刈谷市でいうところの22地区のようなもの)があり、それぞれの地区毎に公民館が整備されています。そして、その地区毎に地区体育協会があったのですが、今回訪問した一ノ谷地区では、その体育協会を母体として平成9年に『一ノ谷スポーツクラブ』が発足しました。

別添資料のような組織図のもと、地域住民による自主運営で、子どもからお年寄りまで活発に活動をしていました。組織運営のための収入は、観音寺市から年間約20万円、自治会加入世帯からの会費約73万円(800円×914戸)、体育協会からの補助金約10〜30万円、その他企業からの献金によるとのことです。

問題点としては、

  1. 会員数が減ってマンネリ化している種目(クラブ)もあるとのこと、特に強いクラブは会員数が増加するが、弱いクラブは減っていってしまう。
  2. 自治会加入世帯より会費を徴収しているが、その自治会への加入率が低下している(現在の加入率約56%)
  3. 企業献金については集金が難しく、理事より見直しの声がある

などがあるようです。

観音寺市9地区全てにおいてこうした総合型地域スポーツクラブが設立されているわけではなく、この一ノ谷地区以外は全てこれまで通り地区体育協会としての運営でありました。この点はやはり、地域住民に設立に向けた前向きなやる気があるかどうかが大きなポイントであるといえます。

しかし、その一ノ谷スポーツクラブにしても、事務局は公民館の中にあり、クラブ運営の事務局的な仕事は全て公民館長(市の嘱託職員)が行っており、必ずしも「地域の住民による自発的な組織・・・」とはなっていないように思います。刈谷市においてもどこまで「地域住民の自主性」ということが発揮できるかが、総合型地域スポーツクラブ設立に際しての重要な点であると思います。

この一ノ谷スポーツクラブが運営上非常に恵まれていると思う点としては、「小学校区=地区=公民館単位=スポーツクラブ単位」ということです。つまりスポーツクラブの対象住民が、地区や学区と同じであるということです。現在刈谷市においては中学校区単位での設立を検討していますが、「地区とスポーツクラブ」「小学校の学区とスポーツクラブ」といった連携が非常に難しい点であると思います。

  1. 愛媛県久万高原町 久万農業公園アグリピアについて

今回訪問した愛媛県久万高原町 久万農業公園アグリピアは、大きく言うと2つの施設から成っています。

  1. 久万高原町で新規就農を志す人のための研修農場
  2. 都市と農村交流推進のためのクライアンガルテン(市民農園)です。

先の本会議一般質問で、会派の議員が「刈谷市には現在市民菜園はあるが、市民農園法に基づく市民農園を整備して、遊休農地の活用と市民に自然の中で大地を耕作して野菜を作る機会を提供してはどうか」と質問していましたので、今回は特に(2)を中心に見て来ました。

市民農園の概要は、

Aタイプ(8区画)
ログハウス(約9u)テラスデッキ付き
畑地 約53u
散水栓 2区画で共有
専用駐車場付き
年間使用料 120000円
全てうまっている(初年度は10倍の競争率)
Bタイプ(14区画)
ログハウス(約9u)テラスデッキなし
畑地 約36u
散水栓 2区画で共有
年間使用料 85000円
全てうまっている
Cタイプ(40区画)
畑地 約33u
散水栓 4区画で共有
年間使用料 当初25000円だったが半分しかうまらず、
そこで平成16年から15000円に値下げ。
今は全てうまっている

そして、地元農家による営農指導を受けることができ、農業の知識がなくても野菜作りに取り組めるとのことです。また、毎月1回行われる「農園の日」という様々なイベントに参加できたり、国民宿舎への温泉入浴料が無料などの特典が付いているようです。

法律の関係で、ログハウスはあくまで休憩のための施設であり、電気・水道はなく、宿泊はできないとのことですが、実際にはそこで宿泊される方や、バーベキュー等の飲食をされる方がいて、ログハウス付きのA・Bタイプは人気があるが、ログハウスの付いていないCタイプは人気がないといったことから判るように、ただ畑仕事をやりに来るだけでなく、家族・仲間でバーベキューなどをしながら1日をアウトドアで楽しむといった要素が強いようです。

利用する側の一市民の立場に立った時、「こういった施設が身近にあれば嬉しいなぁ」という気持ちはありますが、本当に刈谷市にそれだけのニーズがあるか? 市民菜園ではだめなのか? 法律上の問題点はないのか? など、今回のことで初めて知った「市民農園」についてこの機会にもう少し勉強をしてみようと思います。

  1. 愛媛県松山市 安全で安心なまちづくりについて

残念ながらここ数年刈谷市においても犯罪が急速に増加しています。平成15年度の刈谷市内における刑法犯の数は4609件、前年度に比べ実に38%もの増加となっています。平成6年度が2000件弱ですので、10年間で倍の犯罪件数となっています。

これまで、刈谷市を初めとしてほとんどの自治体において「防犯は警察の仕事」「犯人を捕まえるのは警察」という考え方が一般的で、犯罪の防止に対して積極的な取り組みが行われていなかったのではないかと思います。確かに、「犯人を捕まえるのは警察」ですが、犯罪のない安全で安心して暮らせるまちをつくることは、市民の生活基盤を預かる自治体の最も重要な責務であると思います。従って、これまで積極的に取り組んできた防災と合わせて防犯を視野に入れた施策が今後は必要であると思います。

そこで今回、「松山市安全で安心なまちづくり条例」を制定するなど、市民・行政・警察が一体となって、防犯に取り組んでいる松山市に、その先進的な取り組みを勉強に行きました。

この松山市で防犯に対する各種施策を積極的に行うようになったきっかけは、平成11年5月に市の中心部において、若者による暴走行為が引き金で暴動にまで発展したことだそうです。

その後、「松山市安全で安心なまちづくり市民懇談会」を平成13年4月に委員15名で立ち上げました。その提言に基づいて、平成14年4月に「松山市安全で安心なまちづくり条例」を制定。その中で、まちづくり会議の設置やモデル地区の指定が謳われており、現在までその条例に基づいて各種の施策が行われています。

特に、モデル地区に指定した「番町地区」ではワークショップの開催・落書き消し活動・安全パトロール・声かけパトロールなどを活動を積極的に行っていました。その中の落書き消し活動については、以前受講したセミナーで聞いた『割れ窓理論』=「一枚の割れたガラス窓を放置しておくと、たちまち街全体が荒れ、犯罪が増加する」に合致したものであり、まちを綺麗に整備することは防犯対策の有効な手だてであると再認識しました。地域住民によるこれらの取り組みの結果、この「番町地区」における犯罪件数は平成15年が1002件であったものが、平成16年には798件に減ったとのことでした。

今回の「松山市安全で安心なまちづくり条例」は理念条例で、罰則規定は盛り込まれていませんが、今後刈谷市においてもこうした防犯対策としての条例制定は、罰則規定の有無を含めて検討しても良いのではないかと感じました。