政務調査についての所感
平成20年2月12日(火)〜13日(水)の2日間、自民クラブのメンバー7名で行政視察に行って参りました。
視察項目は
それぞれの項目毎に報告いたしますと
- 大阪府東大阪市 新庁舎・証明書自動発行機について
平成15年に完成した東大阪市の新庁舎の概要は、
敷地面積 11,000.01m² (西側駐車場含めて15,000.01m²) 建築面積 3,856.16m² 延床面積 50,052.13m² 階数 地上24階 (塔屋1階含む)、地下2階 構造種別 地上 鉄骨造
地下 鉄筋コンクリート一部鉄骨鉄筋コンクリート造駐車台数 434台(来庁用 253台 公用181台) 起工 平成12年10月 竣工 平成15年3月 総事業費 22,558,653千円 ですから、現在刈谷市において計画されている新庁舎のほぼ倍の規模であります。この施設の中で私は、次の3つの点に関心を持って調査してまいりました。[災害時の防災拠点としての機能] [環境への配慮] [高齢者、障害者への配慮]の3点です。そこで、それぞれの点ごとに報告しますと・・・
- 災害時の防災拠点としての機能
- 庁舎の躯体には、制震壁を設け、阪神大震災級の地震にも耐えることのできる建物として整備していました。また、非常時の飲料水確保のための耐震性貯水槽(100t)、自家発電設備(庁舎に必要な電力を3日間発電可能)、屋上ヘリポートなどを整備していました。
- 環境への配慮
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- 太陽光発電・・・パネル90枚を低層階屋上(4階)に設置、発電量最大10kw、主に1階の大型映像設備の電源として使用していました。
- 雨水の再利用・・・屋上の雨水をろ過、滅菌し植栽の散水に再利用していました。年間380t程度とのことです。
- 照度センサー付照明器具・・・執務室の照明は、昼間の明るさに応じて、自動的に明るさを調節し、消費電力を抑制していました。
- 高齢者、障害者への配慮
- お年寄りや体の不自由な方でも安心して利用できるよう、バリアフリー庁舎として整備。エレベーター、トイレ、受付カウンターなど車椅子対応としていました。さらに、市民の方が利用されることの多い1階ロビー、2・3階の窓口業務階、22階展望ロビーについては、目標物を音声で案内するシステムを設置していました。
これらの特徴的な機能については、まだ刈谷市の新庁舎内にも反映できると思いますので、参考にするよう提案してまいりたいと思います。
次に今回の新庁舎視察のもう1つの関心事であります[証明書自動発行機]について報告します・・・
平成18年2月より、業務時間外や休日に住民票などの証明書を交付することの出来る[証明書自動発行機]を設置しています。印鑑登録のしてある方で自動交付機を利用される方には「印鑑登録証」を、印鑑登録のしていない方で自動交付機を利用される方には「市民カード」を発行して、市役所本庁のほか7つの行政サービスセンターの計8箇所にこの[証明書自動発行機]を設置して、市民への利便性向上に役立てていました。
証明書自動交付機の利用状況(証明書の発行部数)(平成19年12月末現在)は次の通りです。証明の種類 証明書発行部数 部数 時間内 時間外・休日 印鑑登録証明書 15,655 12,752 2,903 住民票の写し 9,110 6,807 3,133 外国人登録原票記載事項証明書 760 624 136 戸籍証明書 1,364 1,004 360 市民税・府民税証明書 350 248 102 合計 27,239 21,435 (78.7%) 5,804 (21.3%) そして設置のための予算は
- 平成18年2月稼動の4台に係る予算
4台 月額1,879,500×60月=112,770,000円
(自動交付機本体、ソフト使用料、総合証明システムの改修、カード管理システム・夜間受付システム・カード停止システム・自動交付機システムのカスタマイズ費用、税証明書導入のための費用等) - 平成19年4月稼動の4台に係る予算
4台 月額1,380,750×60月=82,845,000円
(自動交付機本体、ソフト使用料) - 導入時のその他費用
監視カメラ(3ヶ所) 3,150,000円 可動式案内用看板(8ヶ所16台) 960,000円 - 保守費用
8台 月額1,373,400円(但し、稼動後1年間は無料)でした。
当初この[証明書自動交付機]を導入するに当たっての利用予測は、「証明書発行件数30万件のうち20万件は、この自動交付機を利用する」というものでありました。ところが実際は上記の利用状況で示した通り、約1割程度の利用に止まっています。その理由としては、利用するには事前の利用登録が必要であり、東大阪市においては戸籍証明書の発行も取扱っているため、本人申請・本人受領が必要となりますので、市民にとっては不便さを感じさせているようです。一方こうした自動発行機を設置している他市の例を見てみますと、戸籍証明書の発行は行っていないため(印鑑登録証明書・住民票の写し発行に止めている)煩雑さがなく、利用がかなり進んでいるようです。従って、刈谷市において同様の[証明書自動交付機]を設置する際には、利用促進のため[証明書自動交付機]による戸籍証明発行は行うべきではないと思いました。もちろん、その方が機器導入費用も安く済むと思います。
- 兵庫県西宮市 環境教育の取り組みについて
西宮市の環境教育の取り組みとしては、EWCが挙げられます。このEWCというのは1992年から始めた、地球と地域を結ぶ市民のための西宮独自の環境学習システムで、平成14年より新たな10年後を目標として「2011年・地球ウォッチング・にしのみや」と名称を変えて、地域に根ざした活動を続けていました。この活動の特徴は、市内の小学生27000人を対象にしていること、学校や地域団体、行政、事業所など大人たちの支援ネットワークを広げていることが挙げられます。具体的な取り組みとしては・・・、子どもたちが環境学習や活動に参加すれば[エコカード]に[エコスタンプ]を押してもらえ、一定数のスタンプが集まれば[アースレンジャー認定書]がEWC事務局より交付されるというものです。西宮市内の全小学校と保護者には、学校から[エコカード](各学年6種類)と[にしのみやエコ活動の手引き]などが配布されています。子どもたちの活動を支援し、エコスタンプを押す役目(サポーター)になるのは、学校の先生や地域団体のリーダー、文具店や量販店の方、環境関連の行政機関担当者、児童館・公民館・植物園の職員などで、子どもたちの環境学習を家庭・地域・お店との関わりの中で支えているのが特徴です。当初は小学生だけを対象とした事業でしたが、現在はそれを発展させ、各世代に応じた環境学習システムということで、幼児には[地球となかよしカード]を、中学生以上には[エコアクションカード]を配布していました。
この事業は、西宮市の環境都市推進グループが実施主体となって、教育委員会を巻き込んで行っている事業であります。刈谷市に置き換えて考えると、環境課の行う新規事業に対してどれだけ小中学校と連携することが出来るか、私はそれがひとつのハードルになるのではないかと感じました。
今回の視察で訪問した先は西宮市役所ではなく、環境学習サポートセンターと言う施設でした。西宮市ではこうした環境学習の拠点が、海・山・川をそれぞれ切り口として3箇所ありました。今日お邪魔した施設は川をテーマとした施設で、水辺の自然環境の大切さを学ぶことの出来るミニミニ水族館(市内の河川や水路に生息する淡水魚など約35種類の生き物を水槽展示)も設置されていました。こういった施設が、エココミュニティ作りの拠点施設であると思います。
今回、EWC・環境学習サポートセンターを勉強して感じたのは、「刈谷市では環境について学習するという取り組みが余りやられていないのではないか」ということです。確かに数年前からエコ家族に対する啓蒙セミナー実施といった事業は行っていますし、ごみ減量化などの現実的な環境保全に対する取り組みは行われているのですが、教育委員会や商店街、自治会などと連携して「環境に対する学習」にもう少し力を入れても良いのではないかと感じました。もちろん現実的な取り組みと違って「環境に対する学習」は、環境面において直ぐに成果の生まれるものではありませんが、長い目で見ての環境保全活動として必要なことであろうと思います。