平成20年度
施政方針及び議案の大綱
刈谷市長
平成20年3月市議会の定例会にあたり、所信の一端とご提案申し上げております議案の大綱についてご説明申し上げ、議会並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
昨年の7月に市民の皆様の信任を受け、市長に就任いたしました私にとりまして、平成20年度は施策推進の本格的なスタートの年となります。選挙を通じてお示しをいたしましたマニフェストの実現に向け、新年度当初には工程表をお示しし、具体的な取り組みに着手してまいります。
さて、我が国の経済状況は、バブル期以降の低迷を抜け、着実な成長基調で推移してまいりましたが、世界的な原油や原材料価格の高騰、サブプライムローン問題等のアメリカ経済の不安要素などを背景に、年明けから株価は下落傾向で推移しており、日本銀行が利上げを見送るなど、国内の景気動向の先行きに陰りが見えてきたとの報道もなされています。東海地域は、自動車や航空関連産業、鉄鋼産業などの好調さに支えられ、全国屈指の堅調な経済活動が行われていますが、多くのグローバル企業が立地し、世界的な経済動向が、直接この地域の経済活動に影響を及ぼすことから、今後の国内外の経済情勢を注意深く見守っていく必要があります。
現在、国会においては、ガソリン税などの暫定税率の延長に伴う租税特別措置法改正案に対し、盛んな議論がなされています。道路整備が大きな課題である本市にとりまして、法案の行方によっては、地方道路譲与税などが歳入減になる恐れがあるとともに、現在進められている国道23号の4車線化や立体交差化、今後の国道419号の4車線化などの進捗に影響を与えないか懸念されるところであります。
また、平成20年度の税制改正においては、地方の地域間格差の是正対策として、地方税の一つである法人事業税のうち約2.6兆円を国税とし、これを人口や従業者数で再配分する内容が盛り込まれました。直接的には都道府県が影響を受けるわけですが、愛知県では400億円を超える歳入減という試算が出ています。実際に、試算のような影響が出るのは、平成21年度以降となりますが、こうしたことにより、県の施策推進に遅れや影響が出れば、当然市町村も間接的に影響を受けることとなります。消費税を含めた税体系の抜本的改革までの暫定措置であるとのことですが、受益と負担という地方税の原則を揺るがす大きな問題であるばかりでなく、地域の努力の積み重ねを奪うことにもつながりかねない問題であると考えています。
こうした状況の中、本市の健全財政を今後も維持できるよう努め、市民生活の向上を目指し、施策の推進に取り組んでまいります。新年度予算においても、マニフェストに掲げた施策をはじめ市民ニーズや社会的課題の解決に向けた取り組みを中心に、積極的な予算編成をさせていただきました。
施策の推進にあたりましては、「やすらぎ」「いきがい」「うるおい」「いろどり」「しんらい」という言葉をキーワードに、大きな視点と細やかな気配りをもって、市民力・地域力・総合力を生かして、市民の皆様が“元気で幸せ”を実感できるまちづくりを推進してまいります。今後とも皆様の一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
それでは、以下、平成20年度の主要施策と予算における基本的な考え方につきまして、ご説明申し上げます。
はじめに、「やすらぎ」であります。
“暮らしの安心と安全”が、「やすらぎ」に込めた思いであります。
市民の皆様が、不安なく生活を送ることができるよう、子育てと社会参加の両立、高齢者・障害者の方が安心して生活できる環境の整備、市民の生命と安全を守るための防犯・防災対策などを推進してまいります。
第1は、子どもを安心して生み育てることができる環境の整備です。
新年度から、小学校入学前までの乳幼児医療費の助成を、子ども医療費と名称を変更し、中学校卒業時までの入通院に係る医療費の自己負担分を助成することにより、子育てにかかる負担の軽減と子どもたちの健やかな成長を支援してまいります。
また、共働き家庭の児童の生活の場としての児童クラブの充実や、放課後の児童の居場所づくりとしての放課後子ども教室の実施を進めてまいります。新年度には、小学校敷地内へ児童クラブを移転整備するための実施設計や、小高原小学校において放課後子ども教室のモデル事業を実施してまいります。
現在、整備を行っているあおば保育園の移転新築については、年内の完成を目指して取り組んでまいります。
このほか、母親の育児不安等の解消を図るために、生後4か月までの第一子を持つ全家庭を助産師が訪問する育児健康支援事業の拡充や、元気で安全な出産をしていただく支援として、妊婦健診や母子歯科健診の公費負担の拡大などを図ってまいります。
第2は、高齢者や障害者の方が地域で安心して暮らすことができる環境の整備です。
新年度から介護保険や障害者支援策としての住宅改修制度とは別に、要介護認定を受けていない高齢者世帯の方が、自宅の段差解消や手すりなどの改修を行う場合の助成制度を創設し、自宅を中心に地域の中でいつまでも安心して暮らすことができるよう高齢者住宅バリアフリー化の支援を行ってまいります。
また、地域のコミュニティ施設であります市民館にエレベータを設置し、より利用しやすい施設にしてまいります。新年度には、整備計画と改修に向けた実施設計等を行ってまいります。
このほか、障害者の方々を対象としたグループホーム等の整備を図るための助成制度を検討するほか、毎年のように大きく変化する国の社会福祉関連施策にも適切に対応し、市民の安心を後退させることのないよう努めてまいります。
新年度から新たに後期高齢者医療制度が始まります。75歳以上の高齢者の方を対象とした新しい医療制度の創設に伴い、スムーズに新制度に移行できるよう啓発等にも努めてまいります。
第3は、犯罪のないまちづくりと災害から市民の生命と財産を守る取り組みです。
防犯対策として、新年度に青色回転灯を装着したパトロール車を新たに4台、各市民センターなどに配備し、地域安全パトロール隊に活用していただく予定であります。また、公用車の一部にも白黒のツートン塗装を施し、用務等で使用する際に職員による防犯の啓発活動も行ってまいります。
子どもたちの学校生活の安全を確保するため、保育園・幼稚園・小学校に続き、新年度は全中学校に防犯カメラを設置してまいります。さらに、PTAや地域の皆様などのご協力をいただき、登下校時の安全をサポートしていただいています各学校のスクールガードの活動を支援するため、助言・指導などにあたるスクールガードリーダーの増員を図ってまいります。
近年、インターネット詐欺や振り込め詐欺、訪問販売のトラブルなど、消費生活などに起因する相談や、急増している外国人の生活相談などに対応するため、弁護士相談や消費生活相談などの相談体制の充実とともに、外国人相談員の増員を図ってまいります。
このほか、犯罪抑止効果があると言われています青色防犯灯を、刈谷駅北口の駐輪場に設置してまいります。
一方、防災対策としては、公共施設や橋りょうの耐震工事、河川・排水路の改修やポンプ場の新設、ライフラインであります水道管の耐震化など、地震・大雨などによる被害を最小限に食い止めるための対策を実施してまいりました。今後も積極的に進めていくとともに、災害後の復旧や支援対策として、避難所機能の充実を図ってまいります。
新年度には、避難所への太陽光発電システムなどの設置により夜間における電力の確保や公園を一時的な避難場所とするための施設整備の実施設計を行ってまいります。また、避難所である小中学校等の受水槽の水を、災害時の飲料用として提供できるよう給水用蛇口を設置してまいります。
このほか消防団活動の支援として、ポンプ車両の更新と団員報酬の増額を行い、地域防災の重要な要の一つとして支援を行ってまいります。
次に、「いきがい」であります。
“生きがいを持った人生のサポート”が、「いきがい」に込めた思いであります。
市民の皆様が、自己実現を図り、健康で元気に暮らすことができるよう、健康づくりや生きがい支援、産業の振興を図ってまいります。
そして、次世代を担う子どもたちの健やかな成長を促すことができるよう、教育環境の充実を図ってまいります。
第1は、市民の健康づくりと生きがいづくりの支援です。
社会的な環境変化の中で、手狭となっている保健センターの移転改築を進めてまいります。新年度には、建設に向けた実施設計に着手してまいります。これまでの健康センター機能に加え、子どもの障害などの早期発見やその後の指導を適切に行うことができる早期療育機能や、高齢者向けのシルバートレーニング施設なども充実させ、市民の健康づくりの拠点となるように努めてまいります。
また、刈谷医師会が実施する休日診療所や臨床検査センター機能を備えた医師会館の建て替えに助成を行い、地域医療活動や救急診療の充実を図ってまいります。
このほか、逢妻川の河川敷を利用したサイクリングロードの整備にも着手してまいります。新年度には、基本構想の策定を行い、河川管理者であります愛知県と協議を行ってまいります。
一方、生きがいづくりでは、団塊世代の定年退職が始まっている中、定年後の生きがいの一つとして、農業に親しむ環境の整備に努めてまいります。JAあいち中央の旧西境支店の建物を活用し、新年度に「刈谷生きがい楽農センター」をオープンする予定です。遊休農地などを活用して、生きがいづくりの充実を図ってまいります。
第2は、農業・商業・工業の活性化の支援です。
産業振興施策としては、頑張る人を支援できる体制や制度を整備してまいります。
これまで行っている事業者支援としての一店逸品運動や商店街事業などへの支援を継続するとともに、新年度においては、中小企業の経営指導や技術指導などを行う中小企業新開発マネジメント事業の充実に向け、コーディネーターによる相談体制の充実やビジネススクールの開催などを委託してまいります。
このほか、新たな工業用地の確保に向けた取り組みや土地改良等の農業基盤整備、共同で取り組む魅力ある商店街づくりなどの活性化に対する支援制度など施策の充実を図ってまいります。
第3は、子どもへの確かな学力の定着と教育環境の充実です。
次世代を担う子どもたちの教育環境については、教育施設の充実とともに、学習の基礎、基本の確実な習得と、児童生徒個々に合わせたきめ細かな指導育成ができるよう、少人数学級や少人数授業の充実を図ってまいります。
新年度から、愛知県の教職員配置により、35人以下の少人数学級が小学校2年生まで拡大されます。引き続き、少人数学級の拡充を要望するとともに、市としては、中学校で既に行っている総合学力調査を、小学校4年生から6年生までに拡充し、子どもたちの学習の習熟度や学習意識の実態を把握し、授業に活用することができるよう進めてまいります。
教育施設の整備としては、老朽化した校舎や体育館などの建て替え、児童生徒の増加に対応した校舎の増築などを進めてまいります。本年度、刈谷東中学校北舎の建て替えと刈谷幼稚園の増築が完了しますが、新年度は、双葉小学校北舎、小垣江小学校体育館、小高原小学校プールの改築に着手するほか、朝日中学校の増築や小中学校の体育館や幼稚園の外壁改修などを行ってまいります。
このほか、私立高等学校等授業料補助制度を拡充し、子どもが私立高校等に在籍している世帯への支援を充実してまいります。また、第二学校給食センターについては、新年度から建設工事に着手してまいります。
次に、「うるおい」であります。
“快適で住みやすい都市基盤の整備”が、「うるおい」に込めた思いであります。
本市には、交通集中による渋滞など都市が持つ特有の課題もあり、こうした問題の解消に向けた取り組みを推進するとともに、生活基盤の整備と合わせて、緑化などの「うるおい」を感じられる取り組みを進めてまいります。
第1は、快適な交通機能の整備です。
本市は、市内中心部への通勤や物流の集中に加え、通過交通に起因する交通渋滞の解消が、大きな課題であります。
これまでも道路整備については重点施策として取り組んでまいりましたが、新年度も引き続き、数多くの事業に取り組んでまいります。特に、渋滞対策の要と考えている南北縦貫道路の一部である市道01−4号線及び市道01−40号線をはじめ、バイパス機能を備えた幹線道路については、積極的に進めるとともに、生活環境の改善のための道路整備についても、地元の協力を得て、着実に取り組んでまいります。刈谷駅南地区の再開発事業と並行して進めている高須線及び一里山町の市道1−400号線の拡幅改良については、新年度中の完成を目指しています。
交通安全対策としては、刈谷駅南口からアピタ方面に向かう市道2−298号線について、道路を拡幅し、歩道を設置することで、歩行者の安全確保に努めてまいります。新年度は、名鉄三河線踏切の拡幅工事と道路拡幅用地の取得を行ってまいります。また、渋滞対策の一つとして有効な手段である交差点改良は、現在、新田町交差点の改良工事などを進めていますが、未改良の主要交差点についても用地取得を進め、早期の完了に努めてまいります。
このほか、本年度、交通の諸課題を整理し、本市の将来にとって望ましい道路体系等を検討した「道路整備計画」を策定しています。新年度以降、この計画をもとに、道路整備の重点化などを図ってまいります。
近年、朝夕の通勤通学時間帯を中心に混雑するJR刈谷駅は、上下線のホームに階段を新設し、改札口の移設・増設をするなど、利便性向上への改修についてJR東海と協議を重ね、新年度には、改修工事に必要な実施設計を行ってまいります。また、自転車などによる駅利用者のため、本年度の刈谷駅南口駐輪場の整備に続き、北口駐輪場の立体化工事を行い、駐輪台数の増設を図ってまいります。
第2は、緑に包まれた都市空間や魅力ある都市基盤の整備です。
本定例会に、議案として緑化推進基金条例の制定について上程させていただいています。新年度には、この基金の運用益を活用した緑化推進のための施策を検討してまいります。併せて、街路樹等の更新についても、市民の皆様からいろいろな意見をいただいており、老木化している樹木などから植え替えをし、街並みと調和した街路樹整備を検討してまいります。そうした中で、新年度に拡幅改良工事の完了を予定している高須線など再開発地区の外周道路については、シンボル的な並木の道路となるよう努めてまいります。
亀城公園については、歴史文化に触れることができる総合公園として再整備を行ってまいります。新年度には、再整備の基本方針の策定と用地取得を行ってまいります。
魅力ある都市基盤整備の一つとして、現在刈谷駅南地区の再開発事業に着手しています。市民の皆様には大変不便をお掛けしているわけでありますが、本年の秋頃を目処に、商業施設の整備とあわせ駅前広場や道路などの整備は完了できるよう取り組んでまいります。また、新年度から2か年の計画で刈谷駅北口の駅前広場の整備にも着手してまいります。駅を利用される方々の利便性の向上と市の玄関口としての顔をあわせ持った駅前広場となるよう努めてまいります。
第3は、地球にやさしい環境施策の推進です。
地球温暖化対策としてのCO2を始めとする温室効果ガス削減問題については、京都議定書後の新たな枠組み合意への模索が続いており、本年7月に我が国で開催予定の先進国首脳会議の中心議題にもなると言われ、現在、世界的な課題として議論されています。本市においても、地球温暖化対策地域推進計画に基づき、地球温暖化防止のための施策を進めるとともに、リサイクル、資源回収などを推進し、環境にやさしい社会の構築を進めてまいります。
資源回収については、新たに紙類のステーション回収を進めるため、新年度は、モデル地区を指定して試行的に実施し、市内全域での実施に向けた課題を検証してまいります。併せて、地域などにおける資源回収活動を支援するため、各地区が設置する資源回収所に対する補助制度を設けてまいります。
このほか、市民の皆様に環境にやさしいライフスタイルの構築に向けた啓発事業として、新年度から、レジ袋の削減に向け、買い物袋を持参して集めたポイントをオリジナルエコバッグに交換する事業を実施するほか、本年度、保育園や幼稚園、庁舎の一部で実施したグリーンカーテンを小学校や市内の公共施設に拡大し、市民の皆様にも協力を呼びかけてまいります。
次に、「いろどり」であります。
“郷土の財産を大切にしたい”“余暇活動を通じて人生を豊かにしたい”が、「いろどり」に込めた思いであります。
先人たちが育んできた歴史や文化を、未来へと語り継ぐことも私たちの大切な使命であります。そして、文化やスポーツといった生涯学習、さらには人と人との交流といった幅広い市民の自主的な活動を大切にし、施策の推進に努めてまいります。
第1は、自然に親しむことができる環境の整備です。
本市には、天然記念物の小堤西池のカキツバタ群落という貴重な財産があります。自然のまま残るカキツバタの自生地としては日本一であり、こうした財産を活かし、カキツバタの里づくりに取り組んでまいります。小堤西池のカキツバタ群落は、池の東側丘陵地の竹の繁茂など周辺の環境変化の影響もあり、保護増殖対策が必要であります。本年度、保護増殖対策に関する計画をとりまとめており、新年度以降、対策の詳細検討と実施を進め、市民の貴重な財産として末永く守ってまいります。
刈谷ハイウェイオアシスとして整備してまいりました岩ケ池公園については、本年度で第2期整備がほぼ完了いたします。周辺の自然にも配慮しながら、遊戯施設や林間遊具などを整備してまいりました。新年度のオープンを予定していますので、ぜひ多くの方に利用していただけるよう期待をしています。また、第3期整備として、岩ケ池を利用したカキツバタ園や樹林地を生かした散策路の整備、岩ケ池の浄化対策などの検討を進めていきたいと考えています。
多くの子どもたちに人気の高い交通児童遊園の再整備にも取り組んでいます。本年度で大型遊具の更新を終え、新年度中の完成を目指してまいります。
このほか、本市には大きな河川が市内を横断しています。河川等の堤防を活用し、桜堤などの整備に取り組んでまいります。新年度は、整備箇所の検討を行い、関係機関との調整などを行ってまいります。
第2は、スポーツや文化に親しむ環境の整備です。
余暇活動を豊かに過ごすことができるよう生涯学習施策の推進に取り組んでまいります。新たな生涯学習の拠点として、旧愛知県刈谷勤労福祉会館を改修し、新年度に、北部生涯学習センターとしてオープンします。市民の学びの拠点として、多くの市民の皆様に利用していただきますようお願い申し上げます。
将来的には、現在進めています刈谷駅南地区の再開発事業の中で、施設が整備されれば、北部・中部・南部の生涯学習センターと市民センターなどが連携を図り、「いつでも、どこでも、だれでも」生涯学習に参加できるまちづくりが、より充実するものと考えています。
スポーツに親しむ環境の整備としては、逢妻川河川敷を利用したスポーツ施設の整備を、愛知県の河川改修事業と合わせ、進めてまいります。新年度は、施設の基本設計を行ってまいります。
このほか、市民の利便性の向上を図るため、パソコンや携帯電話で図書の貸出予約ができる図書館システムを導入してまいります。また、美術館においては、「内藤ルネ展」「加藤万也展」「ブルーノ・ムナーリ展」を開催し、市民の皆様が質の高い芸術に触れる機会を提供してまいります。
第3は、郷土の財産の継承や多彩な交流の推進です。
市内には有形無形の様々な財産があります。万燈祭や大名行列、野田雨乞笠おどりなどは、連綿と時代を超え、人から人へと伝承されてきた貴重な財産であります。引き続き、大切に守り育ててまいります。
新年度から、市が所蔵する民俗資料・古文書等の文化財目録を整理し、パソコン上で資料の概要や画像を検索・閲覧できる文化財データベースを構築してまいります。
また、マニフェストに掲げています歴史資料館の整備については、その実現に向け、新年度から具体的な検討に着手してまいりたいと考えています。
一方、愛知万博のフレンドシップ事業を継承し、主にインド、カナダなどとの交流を推進してまいります。「ストリートホッケー交流会」「ナマステ・インディア2008」などを開催し、多くの市民の交流のきっかけづくりをしていきたいと考えています。また、本年は、日本カナダ修好80周年という記念すべき年であります。ミササガ市で行われる記念イベントにおいて、市民派遣団を中心に、両市の友好の取り組みや日本文化を紹介してまいりたいと考えています。
このほか、国際交流協会への支援を拡充し、在住外国人へのコミュニティ意識啓発を図ってまいります。
最後に、「しんらい」であります。
“市民から信頼される行政”“時代の変化に対応した行政の改革”が、「しんらい」に込めた思いであります。
人口減少社会、少子高齢化、国地方の膨大な財政赤字、経済のグローバル化、市民ニーズ・価値観の多様化など、様々な社会変化が激しいスピードで進んでいます。こうした変化の早い時代にあって、その時々の市民生活の課題に適切に対応することが、今からの行政に最も求められることと思っています。
現在、市民との共存・協働によるまちづくりを進めるため、市民協働の基本方針や市民協働推進条例の検討を進めています。新年度中に、基本方針のとりまとめや条例の制定を目指してまいります。
地域をはじめ様々な個人、団体が、自主的にまちづくりの活動に参画されています。こうした市民の皆様の活動を支援していくことと、今後のまちづくりは市民力を発揮していただく視点を大切にし、施策を進めてまいります。
社会が複雑化し、市民ニーズや価値観が多様化している中で、行政の包括的な施策だけでは対応しきれなくなっていることも現実であり、市民生活の課題に一番身近な市民の皆様の力を発揮していただけるような社会への転換が必要な時代を迎えていると思っています。
新年度から、「まちづくりナビ構築事業」として、第7次総合計画の策定に着手してまいります。先に申し上げました人口減少社会や国地方の膨大な財政赤字を抱える状況にあって、今後ますます進展する地方分権時代の中で、市民の皆様の信頼に応えるまちであり続けられるよう、今後のまちづくりの方向性を模索してまいりたいと考えています。併せて、自治基本条例や行政評価制度などについても検討してまいります。
このほか、軽自動車税や水道料金などの納付機会と手段の拡大を図るため、コンビニでの納付が可能となるシステムを、新年度から構築してまいります。市民の利便性の向上に寄与できるものと思っています。
また、新庁舎の建設に新年度から着手してまいります。老朽化し、耐震性の脆弱な庁舎を、市民の皆様にとって使いやすく、親しみやすい施設にするとともに、災害時に十分な対応能力を兼ね備えた本部機能としての役割を果たせるようにしてまいります。
先の12月定例会でもお示しさせていただきましたとおり、新年度から、市民活動部と次世代育成部を新設し、市民の皆様と一緒にまちづくりを進めるための施策、次世代を担う子どもたちを育む施策についても、しっかりと取り組んでまいる所存でございます。
以上、これまで申し上げてまいりました施策や事業を着実に進めることにより、市民の皆様が“元気で幸せ”を実感できるまちづくりに全力で取り組んでまいります。
予算の大綱
次に予算の大綱についてご説明申し上げます。
国においては、平成20年度予算を、歳出改革を軌道に乗せるうえで極めて重要な予算と位置づけ、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」及び「経済財政改革の基本方針2007」に則り、歳出について最大限の削減を行うとともに、若者が明日に希望を持ち、お年寄りが安心できる「希望と安心」の国の実現のため、予算の重点化・効率化を徹底することにより政策課題に的確に対応した予算とするとしています。
こうした国の状況を踏まえ、本市におきましては、健全で安定した財政を基本とし、効率的で効果的な行政運営を進めるとともに、私の市政の目標であります市民の皆様が“元気で幸せ”を実感できるまちづくりを進めるため、各種施策に取り組んでまいります。
平成20年度当初予算につきましては、「やすらぎ」「いきがい」「うるおい」「いろどり」「しんらい」の5つのキーワードを具現化する予算と位置づけ、大きな視点と細やかな気配りにより、まちの魅力を高め、市民が安心して生活できることを目指した「広い視野で見つめ直すやすらぎ安心予算」とさせていただきます。
予算の概要につきましては、一般会計が561億6,148万円で、これは前年度当初予算と比較しまして、0.8パーセントの増であります。
また、新設の後期高齢者医療特別会計をはじめ、土地区画整理事業、下水道事業、国民健康保険等特別会計は、246億5,831万5千円、水道事業会計は37億5,345万1千円であります。全会計の総合計は、845億7,324万6千円で、前年度と比較しまして6.6パーセントの減となっております。
この内、一般会計の歳入につきましては、歳入の根幹をなす市税が347億9,373万6千円で、前年度と比較しまして、3.5パーセントの増を見込んでおります。
次に歳出につきましては、構成比で最も大きな割合を占めているのは、都市基盤整備、災害対策を中心とした土木費で25.4パーセントの142億8,324万6千円であります。
ついで、刈谷駅南地区の生涯学習施設等の取得、小中学校、幼稚園の整備を中心とした教育費で、24.5パーセントの137億4,807万7千円、次に、民生費の21.2パーセントの119億634万6千円であります。なお、歳出に占める投資的経費の割合は、34.2パーセントであります。
一般議案
次に一般議案についてご説明申し上げます。
今回提案しておりますのは、報告案件2件、単行議案4件、条例議案18件、予算議案18件の合計42件であります。
まず、報告案件につきましては、損害賠償の額を定める専決処分及び刈谷市土地開発公社の平成20年度事業計画及び予算についてであります。
単行議案につきましては、公平委員会委員の選任について議会の同意をお願いするもの、北部生涯学習センターの指定管理者の指定について議会の議決をお願いするものなどであります。
条例議案につきましては、消防団員の処遇改善を図るため刈谷市消防団条例を改正するもの、選挙区の改正等に伴い刈谷市農業委員会に関する条例を改正するもの、緑化の推進を図るため刈谷市緑化推進基金条例を制定するものなどであります。
このほか、一般会計、特別会計合わせまして5,897万6千円を減額する平成19年度補正予算も提出いたしております。その主な内容は、一般会計の歳入において、市税の増加、財政調整基金からの繰入金の減額などであり、歳出は、緑化推進基金の創設に伴う積立、事業費の減額などが主なものであります。
また、住吉住宅(1期)建設事業の継続費の変更、庁舎建設事業などの繰越明許費の追加、市道2−581号線道路新設改良事業の債務負担行為の追加も同時にお願いしております。
今回も市民の方からご寄付をいただきました。心から厚くお礼申し上げます。
以上、平成20年度を迎えるにあたり、所信の一端と提出議案の概要を述べさせていただきました。
議員各位並びに市民の皆様の深いご理解とご協力をいただき、本市の都市像であります「人にやさしい快適産業文化都市」の実現に向けて、“元気で幸せ”を実感できるまちづくりを、職員ともども全力を尽して進めていく所存であります。
ご提案申し上げました諸議案につきましては、よろしくご審議賜りご賛同くださいますよう心からお願い申し上げ、説明を終わらせていただきます。