政務調査についての所感
平成21年7月6日(月)〜8日(水)の3日間、自民クラブのメンバー8名と公明クラブのメンバー1名の総勢9名で行政視察に行って参りました。
視察項目は
の3項目です。それぞれの項目毎に報告いたしますと
東京都東久留米市 目黒川整備事業について
東久留米市に流れている黒目川は、以前はフェンスで囲まれコンクリートで整備された川でしたが、平成13年度から平成17年度にかけて、フェンスを撤去しコンクリートでの水路から土と石と草で囲まれた川に再生させました。全国的にこうした形での整備が進められている[多自然川づくり]による整備手法です。これは、先の本会議一般質問において今回参加したメンバーの一人である渡辺議員が、同じ手法での整備を下松川において行なうように要望していましたので、今回先進地の現場を見たことによってそのイメージを明確にすることが出来ました。
整備内容としては、フェンスを撤去し、川辺の傾斜を緩やかにすることで、人々が川に近づくことが出来る構造になり、川沿いには遊歩道やベンチを設置し、人々の散策や憩いの場所となるような親水広場が整備されています。また、目黒川は大量の雨水を流す雨水幹線の役割も担っていますし、広場利用者の安全にも配慮して、一定量以上の雨水は親水路に沿って整備した黒目川2号雨水幹線(余水路)を流れる構造となっていました(下図参照)。
同種の整備を刈谷豊田総合病院南側の下松川沿いにおいて行なえば、入院患者や病院を訪れる方々の癒しの空間として多くの方に喜んでもらえるのではないかと思い、下松川においての整備促進を期待したいと思います。
栃木県宇都宮市 宇都宮城址公園整備事業について
宇都宮城址公園は,宇都宮城の本丸跡という歴史的な場所であり,中心市街地の南部に位置しています。この歴史的な重要性と立地条件を生かし,「史実に忠実な宇都宮城の一部復元」を柱として,「中心市街地の活性化」や「都市防災の重要な拠点」として整備するといった3つの目的を持って整備されました。刈谷市においても亀城公園再整備の計画があり、本会議一般質問においても今回のメンバーの一人である壁谷議員が取り上げていましたので、「その整備に参考になれば」との思いで今回の[宇都宮城址公園整備事業]の行政視察を行ないました。
事業経過は次の通りです。
平成8〜11年度 「御本丸公園再整備調査検討懇談会」や「御本丸公園整備調査検討委員会」を設置し,整備計画等について検討(構成:関係団体,学識経験者,市議会議員) 12年度 「御本丸公園整備基本計画」を策定,公表 - 史実に忠実な櫓,土塁,堀の復元
- 公園と市庁舎をつなぐ緑道整備(0.4ha)
13年度 公園の基本設計策定 14年度 歴史建築物の基本設計策定
宇都宮城復元基金条例の制定(寄附の受入れ基金の設置)
公園名称の改称(御本丸公園→宇都宮城址公園)15年度 公園整備工事開始 16年度 櫓など歴史建築物工事開始 18年度 竣工,供用開始(平成19年3月25日) また、公園の概要は
(1)所在地 宇都宮市本丸町,旭1丁目地内 (2)公園種別 地区公園 (3)面積 約3.7ha (4)主な施設 - 歴史建築物
櫓(清明台,富士見櫓),土塀・土塁・堀の一部 - 御本丸広場,二の丸広場
- みどりの小径(緑道)
- 駐車場(緑道部,公園南,身障者専用)
- 本庁舎駐車場,東第2駐車場との一体的活用
- 土塁内の暫定ガイダンス施設
- トンネル部北側「宇都宮城ものしり館」
- トンネル部南側「まちあるき情報館」
- 主な植栽
- 河津桜 55本
- 大山桜 54本
- ライトアップ施設
日没から午後10時まで,櫓や土塁をライトアップ
事業の特徴の1つとして、[市民協働による事業推進]といったことが挙げられます。これは、平成14年6月に設立された市民組織「よみがえれ!宇都宮城」市民の会が、公園整備に向けての寄付を募り、整備後は市民参加型事業の実施や清掃活動を行なうなど、市民と行政が協働して公園の利用・活用促進を図っているのです。公園整備費は総額32億7400万円でしたが、その内の7100万円はこの市民の会による募金活動によって集まった浄財でありました。
ところで、今回の目的に「都市防災の重要な拠点」とあったので、「どういった事だろう?」と疑問に思ったのですが、それは次のようなことでした。
※都市防災の拠点機能とは・・・
本公園は,一時避難場所及び避難拠点に位置付けている。
- 放送設備やソーラー照明,消火用の防災貯水槽,井戸などを整備
- 復元にあたり,土塁内の倉庫に,災害時の初期活動に必要となる資材,器材を保管
- 災害時に対策本部を設置する市庁舎との連携を図るため,市庁舎と公園間の緑道を被災者と緊急車両が安全に通行できる幅員(10m)や舗装構成とし,被災地における救護・救助,応急医療,物資集配等,避難拠点としての機能充実に努めた。
つまり、防災公園として色合いが強い公園であるということです。そういった意味では、当初意図していた「亀城公園再整備のお手本」といったニュアンスは余り感じなかった視察となりましたが、市民会館の跡地利用計画には大いに参考になりました。また、目的のひとつにある「史実に忠実な宇都宮城の一部復元」の「史実に忠実な・・・」の部分は、亀城公園再整備においても重要なことではないかなと感じました。
茨城県つくば市 家庭学習支援システムについて
つくば市では、教育委員会のWEBサイト上に、小学校1年生から中学校3年生までの各教科の学習教材を置き、子どもたちがいつでもインターネット環境があれば自由にアクセスして学習することが出来るような[家庭学習支援システム]を平成16年から整備していました。小中学生は約18000名、そのうち「家庭にPCによるネット環境が整っている家庭は約90%ある」とのことで、多い日には1日に約1000件のアクセスがあるそうです。『つくばオンラインスタディ』という名称のこのシステムには約1万問の問題が収録されており、解答によって分岐したり動画で判りやすく解説したりするようになっていました。また、判らないところは質問することができ、市内の人材バンクを使って問題を割り振り教員が回答しているとのことでした。
つくば市の児童生徒数は先ほど書いたとおり約18000名、学校の数は小中合わせて52校、一方刈谷市の児童生徒数は約13000名、学校数は21校、また市の面積はつくば市約284平方キロメートルに対して刈谷市50平方キロメートルです。つまり、つくば市では過疎のため児童生徒数が極端に少ない学校も存在していることを物語っています。こういった状況では、教育の機会均等の視点からこうしたネットを活用した家庭学習の支援も必要なのだと思います。しかし、刈谷市においてはそういった状況でもありませんし、また今回のような家庭で行なうオンラインスタディについては、民間事業者においてもサービスを個人向けに提供している実情であり、折角の視察項目ではありましたが、今回のような[家庭学習支援システム]は刈谷市では不要であるとの印象を持ちました。但し、別の側面から感じたことを述べますと・・・
今回の[家庭学習支援システム]はサービスを受ける児童生徒側の金銭的な負担はありません(もちろん、PCの購入やネット接続の費用は掛かりますが)、これは刈谷市における問題集や各種副教材だと置き換えたら、現在一部の副教材は家庭の負担となっていますが、これらは全て市費で賄っても良いのではないかと思います。市費で賄う副教材がある一方で、家庭で負担しなければならない副教材も存在する・・・その点も極めてわかり辛いとも思います。視察項目と直接関係はありませんが、そんなことも感じました。