視察研修所感

自民クラブ 神谷昌宏

平成22年5月11日(火)〜13日(木)の3日間、自民クラブのメンバー7名と議長の総勢8名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 北海道千歳市 C経路街づくり事業について
  2. 北海道砂川市 生ゴミのバイオガス化への取り組みについて
  3. 北海道函館市 博物館事業について

の3項目です。それぞれの項目毎に報告いたしますと

  1. 北海道千歳市 C経路街づくり事業について

    当初「C経路街づくり事業」と聞いた時、この「C経路」と言うのは何だろうと思いました。この「C経路」を説明する上で欠かせない、千歳市の防衛施設の現状について紹介しておきますと・・・千歳市は自衛隊が市街地の三方を取り囲むような形状で、北東に陸上自衛隊東千歳駐屯地、南東に航空自衛隊千歳基地、南西に北千歳駐屯地が位置しており、しかも市街地の縁周部には、装軌車両、主に戦車が頻繁に通行する、延長約10Kmの公道、通称「C経路」が通っており、東千歳駐屯地と北千歳駐屯地、その奥に続く北海道大演習場を結んでいます。

    このC経路は、一部住宅地内を通ることから、沿線住民から騒音振動による被害等が寄せられ、市では、平成6年に(1)道路構造の改良、(2)緩衝地帯の配置、(3)交通安全対策、の3つを柱とする「C経路対策の基本方針」を定め、沿線地域の生活環境の改善に努めてきており、平成14年度に新たな国の補助制度として、防衛施設周辺のまちづくりに寄与すると考えられる施設等について、高率補助で自治体や地域住民に、防衛施設周辺地域の発展に積極的に貢献しようという「まちづくり構想策定支援事業」が創設されたことから、市はC経路沿道の地域における課題解決を図るため、本制度を活用し、「北海道大演習場周辺まちづくり構想」を策定しました。つまり、「C経路街づくり事業」と言うのは、自衛隊基地対策として、国から沢山の補助金が出されている街づくり事業なのです。

    その中で刈谷市にとって参考になる部分としては防災学習交流施設があります。事業概要は、総事業面積は約10.3ha。それを3つに区分し、Aゾーン4.3haには防災学習交流センター[そなえーる]、広さ約2.4haの防災訓練広場、常設ヘリポート、駐車場などを配置しています。Bゾーン1.1haには造成に伴う雨水調整池と消火体験や救出体験が行える広場があります。Cゾーン3haには150人がキャンプ利用できる「野営訓練広場」、調整池を兼ねた「多目的広場」、湧き水を利用した「河川災害訓練広場」、アスレチック遊具などを設置した体を鍛える「サバイバル訓練広場」、この区域を管理するための管理棟、駐車場を配置することとし、Cゾーンは22年度内に完成、23年春にオープン予定となっていました。更に、C経路緑地1.9haは避難誘導路となっており植栽、散策路(園路)、休憩施設を設置し、災害時にはこの緑地帯を避難路として利用できるようになっていました。Aゾーンに建設されている防災学習交流センター「そなえーる」には、災害を「学ぶ」「体験する」、「備える」をテーマに、この施設での体験・学習を通じて防災に対する意識を高めてもらうことを目的として災害を擬似体験する設備があり、我々も様々な体験をして来ました。

    刈谷市においては、旧市民会館(アイリスホール)が本年度取り壊され、防災公園(広場)としての整備が予定されています。今後基本設計等の構想作りが行われて行くと思いますが、今回の視察で学んだことをしっかり生かして行きたいと思っています。

  2. 生ゴミのバイオガス化への取り組みについて

    砂川市を含む2市3町では、これまでは埋め立てや焼却処理をしていた生ゴミをメタン発酵処理によりバイオガス化し、施設の電力や熱量として資源の有効利用を図っていました。具体的には・・・一般家庭及び事業系の生ゴミ(平均10トン/日)を発酵槽内で55℃の高温発酵処理をし、バイオガスを生産する[高速メタン発酵処理施設(処理能力22トン/日)]を設備していました。生産されたバイオガスには60%以上の割合でメタンガスが含まれており、30Kwのガス発電機4台により電気を発生させ、主に施設内で再利用しているほか、多少の売電もしていました。また、熱量については発酵櫓の加熱、施設の暖房やロードヒーティングに利用していました。発酵処理後の生ゴミ残さ(乾燥汚泥)の割合について確認したところ、昨年度の実績で、年間の生ゴミ総重量約2670トンに対してバイオガス化後の乾燥汚泥は年間約16.5トン発生するだけとのことでしたので、その割合としては僅か0.6%ほどでありました。そして、その乾燥汚泥についても汚泥乾燥設備で土壌改良材等に利用しているとのことでした。しかし、残さの発生量が少ないことから、平成22年度の登録申請については検討中であるとのことでした。

    その他、可燃ゴミについては今回視察した施設[クリーンプラザくるくる]では運搬中継施設としての位置づけで、可燃ゴミを圧縮して、近隣市にあるガス化熔融炉の焼却施設に搬入していました。そもそも「なぜ、可燃ゴミと生ゴミの処理の仕方を分けたのか? 同時に焼却処理してしまったほうが処理施設への投資が少なくて済むし、その方が住民にとっては分別が簡単で良いではないか」との疑問があったのですが、可燃ゴミの処理を他自治体で行なっていることからその理由が判りました。可燃ゴミの中から「生ゴミ」を除くことにより焼却施設を持つ自治体に対して、ゴミを持ち込むことの理解も得られやすくなりますし、焼却の際のカロリー量にも影響するといった点が挙げられると思います。

    こうした特殊な事情の中で、行なわれている生ゴミのバイオガス化でありますし、刈谷市においては刈谷知立環境組合において既に97トン/日の焼却処理能力を持つ炉を3基+20トン/日の能力を持つ灰熔融炉2基を昨年新たに整備していますので、今回の視察項目が直接今後の施設整備の参考になるといったことは残念ながらありませんでした。しかし逆にそのことから学んだことがあります。それは、刈谷知立環境組合が新焼却炉を建替える際になぜ今回のように生ゴミをバイオガス化する施設について勉強・検討しなかったのかという点です。結果的に不採用になったとしても、刈谷知立環境組合議員としてはきちんと勉強すべきであったと反省しています。またもう1つの点は、可燃ゴミに含まれる生ゴミの割合の多さについてであります。今回のクリーンプラザくるくるに持ち込まれる可燃ゴミは年間約5470トン、一方生ゴミは先に書いた通り年間約2670トン、つまり「刈谷知立環境組合に持ち込まれる可燃ゴミの内、約3分の1は生ゴミである」といったことも言えるわけであります。「可燃ゴミに含まれる紙類を如何に減らすか」といった命題と共に「可燃ゴミに含まれる生ゴミの減量」についても現在行なっている生ゴミ処理機購入補助の更なる推進が必要であると考えます。

  3. 北海道函館市 博物館事業について

    刈谷市では現在、旧体育館の北側に歴史博物館を建設する計画があり、本年度は基本計画策定の予算ということで490万円の予算が付いています。また、亀城小学校隣の郷土資料館についても歴史博物館完成時には連携活用することを目指して、本年度から展示をリニューアルすると共に耐震補強工事を行うとして8800万円の予算が付いています。こうした歴史博物館建設に向けて、その整備・運営面で参考とするために市立函館博物館を視察しました。施設は、博物館本館と郷土資料館(旧金森洋物店)からなっており、その点においては郷土資料館と連携する刈谷市と似たような形式であると感じました。郷土資料館の運営は民間の任意団体『市立函館博物館友の会』を指定管理者として委託してあり年間の指定管理料は640万円でした。質疑応答の中で「新しく博物館を運営する場合のアドバイスを」と館長に尋ねたところ次のような答えが返ってきました。

    1. [売り]=[お宝]は何か。それを一番にPRすること
    2. その[お宝]と協力関係のある所(団体)と上手にジョイントすること
    3. 市民の参加を得て親しめる博物館にすること
    4. 見るだけから体験する博物館にすること

    だということです。

    これらの点は、運営面で多いに参考にして行きたいと思います。一方、回答の中で出た数字の中から感じたことがありました。それは、入館者の割合が市民約3割、観光客7割という数字です。函館の場合、町全体が観光のまちですから必然的に観光客の入館割合が多くなるものと思いますが、かといって「この博物館を見るためにわざわざ函館に来る」といった方が多くいるとは思えません。その点、刈谷市の場合は観光地ではありませんので他の目的で来た観光客が観光の位置拠点として歴史博物館を訪れるといった数は決して多くないはずです。であれば、歴史博物館そのものに来館することを動機付けるような魅力が必ず必要になってくるものと思われます。「この博物館を見るためにわざわざ刈谷に来た」という来場者を増やす必要があります。そういった意味では、先の館長が言われたアドバイス、その具現化に向けてしっかり取り組んでゆく必要があると思います。