行政視察についての所感
平成22年10月19日(火)〜21日(木)の3日間、自民クラブのメンバー7名と公明クラブのメンバー1名の総勢8名で行政視察と[全国市議会議長会研究フォーラム]に参加して参りました。視察項目は[広島県福山市 福山城博物館について]です。
この2項について、それぞれの項目毎に報告いたしますと
1. 広島県福山市 福山城博物館について
現在刈谷市では亀城公園再整備計画が行なわれています。昭和12年4月の開園以来「刈谷の公園の代表格」「桜の名所」として多くの刈谷市民に親しまれてきた亀城公園も、施設の老朽化や樹勢の衰えた桜が目立つようになってきました。そこで園内施設の更新や桜の植え替え、刈谷城址の整備など大規模なリニューアルを行なうことになったのです。桜の名所としての整備を行なう第1工区と、石垣や櫓など歴史的な空間として整備する第2工区から構成されています。平成22度第1工区では施設整備工事を、第2工区では発掘調査を予定しています。また、公園の北側には平成27年度の完成を目標に歴史博物館の建設を予定しており、公園全体の完成は平成29年度を予定しています。そこで今回、その歴史博物館建設に対して参考になればと言うことで福山城博物館を視察したのです。
そして「なぜ福山城か」と言えば、福山城を築城したのが刈谷藩初代藩主、「鬼日向」水野勝成公だからです。つまり、刈谷城跡に整備された亀城公園と福山城とは縁が深いのです。
この福山城博物館の特徴の1つは、天守閣内に博物館が開設されているということです。その結果、博物館に入場された方々にとっては、観光名所としての城を見に来た人々も含まれており、単独の博物館に比べて多くの入場者が期待できるというメリットがあります。実際、平成21年度の入場者は約6万8500人でしたが、「博物館単独の施設であれば約2万人程度ではなかっただろうか」と担当者は予想しておられました。刈谷市にとっては、単独施設である博物館への入場者をいかに増やすか。亀城公園内における観光スポットとしての位置づけや、展示に変化を持たしてリピーターを如何に呼び込むかなど、入場者を増やすアイデアは施設の計画・設計段階から考えて行かねばならないと感じました。
また、展示内容の多いことにも驚かされました。歴代藩主であった水野家5代・松平家1代・阿部家10代と続く江戸時代〜明治維新関係の展示のほか、遺跡から出土した原始・古代・中世の土器なども展示されていました。訪問した際にも『幕末の福山藩』として阿部氏福山入封300年記念の特別展も開かれていました。刈谷市内にこれだけの展示品があるのか。万燈まつりや大名行列といった祭り関係の展示も加えて、「祭り会館」的な要素も入れた方が良いのか。特別展を出来る限り頻繁に企画すべきであろうなど、「展示の豊富さ=魅力アップ」への取り組みも刈谷市にとっては今後の課題であろうと思います。
施設管理については、指定管理者制度により財団法人ふくやま芸術文化振興財団が管理・運営を行なっていました。年間の指定管理料は約5800万円、これに対して年間の入館料・使用料収入は約1400万円とのことでした。もちろん[使用料金制]でありました。刈谷市の現在の施設においてもそうでありますが、こういった施設においては大半が[使用料金制]を取っています。しかし指定管理者制度のメリットの1つに「民間のやる気やノウハウを生かして、魅力ある施設運営ができ、その結果入場者が増え、市の負担する経費も抑えられる」ということがあるはずです。であれば、[使用料金制]ではなく思い切って民間事業者がより力を発揮しやすい[利用料金制]にチャレンジしてみることも必要ではないかと感じています。
以上のように、「入場者を増やす取り組み」「魅力ある展示品」「管理運営方法」などは、施設の完成後に議論するのではなく、施設の計画段階である今のうちからきちんと議論をしておく必要があると感じました。
2. 第5回全国市議会議長会研究フォーラムについて
20日・21日の2日間に亘り大分市にあるiichiko総合文化センターで行なわれた[全国市議会議長会研究フォーラム]へは全国各地の市議会議員約2400名が集いました。初日は前衆議院議長の河野洋平氏による「衆議院議長を辞めて昨今思うこと」というテーマでの基調講演に続いて、パネルディスカッションは「地方議会のあり方−定数・報酬はどうあるべきか−」ということで、名古屋市議会で起きている市議会リコール署名において問題提起された非常にタイムリーな内容で行なわれました。そして2日目の課題討議は「政治倫理条例について」「議会の調査権について」という内容でした。
この所感では講演・パネルディスカッション・討議の中から、参考になった講師の言葉をいくつか紹介します。先ず前衆議院議長の河野洋平氏による「衆議院議長を辞めて昨今思うこと」というテーマで行なった講演です・・・
- 「二元代表制は難しい、システムが悪い」と言う人がいるが、どこにだってねじれはある⇒(例)衆参
- ねじれを解消するためにもっと話し合うこと→ゆずるべきはゆずって合意を得る
- トップがどれだけ議会に耳を傾けるか←ねじれは必ずしも仕事が出来なくなるわけではない
- ねじれることによりバランスを取る
- 民主政治は世論を大切にしなければならない→しかし、世論調査に一喜一憂して政治が流されやすい→結果を良く掘り下げてみる必要がある⇒(首長に対して)自分がなぜ世論の支持を受けているのかを良く考えて欲しい
- 国益とは、今と5年先・10年先とでは違う→5年・10年後の国益のために今の一手を打つ必要がある
- 日本人は強いリーダーを求める気風がある→しかし私には、強いリーダーが必ずしも良いとは思えない→出来るだけ話し合って・・・⇒民主主義には時間が掛かる
- IMFの調査によると、「1人当たりの所得が多い国=強いリーダーを持っている国」ではない→間違いのない政策が大切
次に、「地方議会のあり方−定数・報酬はどうあるべきか−」というテーマでのパネルディスカッション、「政治倫理条例について」「議会の調査権について」の課題討議です・・・
- 市民から議会や議員の仕事が理解されていない→これを改善しなければならない
- これから地方議会に対して嵐が吹く
- 議会が活性化していないのであれば「定数を減らせ」「報酬を減らせ」の声になる空気がある
- 「議会が本当に必要なの?」これが多くの市民の声
- 地方政治が住民からいかに信頼されていないか
- 市町村合併により6万人の議員が3万4千人に削減→約2100億円の削減⇒十分合理化しているのに理解されていない
- 議会改革が「定数削減」と「待遇低下」をすることだけになってしまっている→困ったことだ!
- 住民が議員を自分たちの代表だと考えていない→住民が議会を信頼していない
- 河村名古屋市長は「イギリスでは地方議会議員の報酬は5000円/日だ」と言っているが、外国との比較は慎重にやらなければならない
なぜならば⇒外国では地方議員の仕事は3R(=ゴミ・道路・税金)だけ+兼職
一方、日本では⇒社会生活のあらゆる仕事をやっている+365日休みなし
→日本と外国との比較は無意味! - 日本では議員の仕事について理解されていない→広報活動の必要性
- 議会の活動を市民にどのように知らせるか
- 大分市議会⇒市民との意見交換会(住民集会)→13の公民館で開催
条例案の骨格を知ってもらうことがキッカケ→のべ500人の参加 - 議会の情報発信がへた→HPは挨拶と会議録しか載ってない
- 他の国に比べて政治や公務員への信頼は低いが「福祉やまちづくりは行政の責任である」と考え、行政への依存度が高い⇒このねじれをどうするか
- 広報活動の手段として[住民集会]という手法は手ぬるい⇒議員の報酬は選挙における得票によって差を付けたらどうか→多くの住民の声を背負っている議員には多くの報酬を払うという制度
- [市民との意見交換会(住民集会)]も良い手法ではあるが、個々の政策ごとに[住民投票]をもっと行なったほうが良い⇒北海道栗山町・・・議会基本条例の中に住民投票条項を設けている
- 利益誘導システムが壊れた→議会の役割が変わってきた
- 今のまま地方分権が進むと益々首長の権限が強まる→議会の権限が強まる形での地方分権でなくては意味がない
- 住民の直接請求に首長が絡むのは二元代表制の趣旨からして疑問だ
- 政治倫理条例において資産公開を義務付けるのは、個人情報保護の観点から難しいのでは→政治倫理条例を遵守していれば資産公開の必要は自ずとなくなる
- 政治倫理条例に規定されていることは、条例のあるなしに関わらず議員は努めなければならない事ばかりである
- 法はそれぞれの胸の内にあり
- 「襟を正す」と言うが「その襟の高さはこのくらいである」と示すのが政治倫理条例である
地方議会のあり方について議論した今回の全国市議会議長会研究フォーラムは、名古屋市において議会のリコールを求める署名が行なわれているなど、市民の議会に対する目が厳しいものになっている中での開催となりました。制度やしくみをいくら改革しても地方政治が良くなる訳ではありません。「議員ひとり一人の意識の改革」と「システムの変革」この両方が前進して初めてなし得るものであるとの思いを、改めて強く感じた勉強会でありました。