文教委員会 視察研修所感

氏名 神谷昌宏

平成23年10月19日(水)〜21日(金)の3日間、文教委員会のメンバー7名と当局2名の合計9名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 神奈川県横須賀市 サポートティーチャーの活用による学力向上事業について
  2. 東京都小金井市 学校給食食材の安全確保について
  3. 静岡県島田市 環境調和型の学校施設と環境教育について

であります。
初日・最終日と生憎若干の雨に降られてしまいましたが、最終日には実際に中学校を訪問するなど、いずれの調査項目も非常に密度の濃い内容で行うことができました。以下、視察地ごとに報告します。

  1. 神奈川県横須賀市 サポートティーチャーの活用による学力向上事業について

    小学校における放課後の時間帯を利用し[放課後学習ルーム]を開設し、週1回派遣される非常勤教師を[サポートティーチャー]として活用することにより、学習内容の定着状況に課題の見られる児童を対象とした個別の学習指導や少人数での補習等も含めた学習指導を行い、基礎的・基本的な知識・技能の定着を図り、児童の学力を向上させることを目的に行なわれている事業です。期待される効果としては・・・

    1. 基礎的・基本的な知識・技能の習得
      一斉授業の中では、学習内容に十分についていかれず、目標に対して努力を要すると判 断される児童をその習熟度に合わせて補習を行い指導することで、成長の段階に合わせた学習内容の基礎的・基本的な知識の定着を図ることができる。
    2. 学習意欲の向上
      習熟度に合わせた学習、少人数での学習により、よりきめ細やかな指導を受けることができ、わかる喜び、できる喜びから児童の学習意欲の向上につながる。
    3. 学習習慣の確立
      学び方を学んだり、繰り返して学んだりすることで、学習に対する意欲が高まると同時に、学習を習慣として身に付けることで、学力の定着を図ることができる。
    4. 進級・進学に対する不安感の解消
      上級学年への進級、進学にあたって、学習への課題や不安を解消することで、安心して進級、進学し新学年での学習に臨めるようになり、不登校の減少にもつながる。
      といったことが挙げられていました。その具体的な方法としては・・・

      • 希望する小学校へサポートティーチャ−派遣  週1回(4時間派遣)・・・原則
        サポートティーチャ−は、小学校教員免許を有するもの及び教職経験者とし、学級担任や教科担任と連携して、教科の基礎的な学力を身に付けさせるための学習指導を行って います。対象児童の学級担任、教科担任等との打ち合わせ、情報交換等児童の状況を把 握することが任務となっています。時給は1548円・交通費580円で年間35回で すから年間140時間ということになります。予算としては本年度総額で約1185万 円、その内、国県からの補助金は1/3です。勤務時間は1日4時間で、放課後学習ル ームは4時半までの開設ですから、単に放課後学習ルームだけの指導ではなく、通常授 業の5・6時限目に補助員としてサポートに入ることもあるようです。
      • 対象とする児童と放課後学習ルームについて
        学校は教科の学習において学力的に努力を要すると判断される通常級在籍の児童を対象に、その習熟度に合わせた指導や反復学習による基礎学力の定着が図れる補習教室(放 課後学習ルーム)を開設しています。
      • 放課後学習ルームにおける指導内容例
        @授業の補習
        A宿題等の支援、指導
        Bドリル学習等、基礎的な学習内容定着のための反復学習
        C児童の習熟度に合わせた学習内容 
      などということでした。
  2. 現在47校中31校にサポートティーチャ−が派遣されていますが、10月からは派遣回数を1回増やすとのこと、また来年度からは全ての小学校で実施するとのことでした。この事業は[学力的に努力を要すると判断される通常級在籍の児童を対象]としての、いわば学力の底上げにある訳です。従って今後、実際に恩恵を受けている人の声が、この事業の成果に対する説得力を持って行くのだろうと思います。横須賀市においては現在刈谷市で実施している[放課後こども教室]は行なわれていないとのことでした。刈谷市では[放課後こども教室]の中に、サポートティーチャ−や放課後学習ルーム的な要素も取り入れたらより魅力的な[放課後こども教室]になるのではないかと思いました。

  3. 東京都小金井市 学校給食食材の安全確保について

    小金井市は小学校9校で児童数5199人、中学校5校で生徒数2270人と刈谷市の約半数の児童生徒数となっています。人口が約11万人ですから、刈谷市に比べて如何に少子化が進んでいるかをその数で図り知ることが出来ます。小金井市の給食は全て完全な自校方式で行なっているとのことでした。あえて「完全な」と表現した理由は、刈谷市の保育園給食のように、メニューは全園統一で、調理だけそれぞれの保育園で行なっているという形ではなく、それぞれの学校に栄養士がいて、メニューも学校ごとに別なもの、もちろん調理もそれぞれの学校ごとに行うということで、学校としての独自性が強く押し出された給食のスタイルになっていました。
    今回は「地産地消の取り組み」「アレルギー食の対応」などについても勉強しましたが、私が一番関心を持って臨んだのは「食材の安全確保」とりわけ「食材の放射能測定をしている」という取り組みについてであります。
    この「食材の放射能測定」は今回の福島原発事故を受けて行なわれるようになったものではなく、既に平成2年から市民団体である『放射能測定器運営協議会』が中心となって、希望する市民から持ち込まれた食品について[セシウム134]と[セシウム137]の測定を実施していたのです。その経緯を時系列に説明しますと・・・
    昭和61年チェルノブイリ原発事故→昭和63年6月議会「放射能測定をして欲しい」旨の陳情が提出される→昭和63年6月22日委員会で採択→平成2年5月発注→平成2年7月放射能測定器運営協議会設立→平成2年8月機器納入という流れになっています。
    機器は「ヨウ化ナトリウム(タリウム)シンチレーションディテクタ」で当時の購入価格で432万6千円(毎年27万6千円の保守点検料が掛かる)、これを小金井市が購入して協議会に貸し出し、検査は協議会が行なっているという図式になっていました。この機器を使って検査結果が出るまでには約6時間掛かるとのことです。これまでは給食食材を年1回サンプル検査を実施して、その結果はHPや市政だよりに掲載したり、PTAに配付したりしているとのことでしたが、今後は心配な食材については1学期に1回程度測定を実施したいとのことでした。測定機器で検出できる限界値は10ベクレル/Kg以下、国の暫定基準値を超えたものについては24時間の再検査、その後一般検査機関(一般社団法人 日本海事検定協会 食品衛生分析センター)へ依頼して再検査を行なっています。
    『小金井市放射能測定器運営協議会』のHPには「測定結果の発表にあたって」として次のような記述がありました・・・

    • 福島原発事故を踏まえて政府が暫定的に設定した食品に関する放射能の基準値(汚染された食品の出荷や販売を規制する基準。規制値とも言う。)は、セシウムの場合、水、牛乳、乳製品は200ベクレル、野菜、穀類、肉、魚などは500ベクレルです。
    • 事故以前、日本には基準値というものはなく、チェルノブイリ事故の後出回った放射能汚染輸入食品を規制する暫定限度370ベクレルが設定されていました。この値はアジアの周辺国に比べると高いものです。それが、今回の事故で更に引き上げられてしまいました。
    • 放射能には、これ以下なら安全という「しきい値」はありません。
    • 私達の周囲には食品添加物、農薬、化学物質、電磁波など身体に悪影響を及ぼす有害物質が数多くあります。放射能もその一つと捉えその特性を知り、対処していくことが望まれます。
    • 人間には有害物質によって傷つけられた細胞を修復する力が備わっています。放射能を取り込まないようにすることも大切ですが、あまり神経質になり過ぎず、抵抗力や免疫力を高めることでリスクを減らすことも大事です。
    • 放射能の影響が大きい乳幼児や子ども、妊婦に一般の大人と同じ基準値を用いることには、批判も多く反対の声が上がっています。できる限り取り込まないようにすることが大切です。
    • 国や東京都の機関が行っている測定だけでは全く不十分です。各市町村単位などで測定器を設置して、きめ細かな測定と情報発信を行うことが求められています。

    現在刈谷市の学校給食においては、こうした食材の放射能測定を行なっていません。しかし一方で多くの保護者からその希望が私の所にも寄せられています。小金井市の今回の機器は約430万円、今から約20年前の物ですから、今ならより安価になっているか、あるいは同程度の価格であればより性能が高まっているはずです。従って、学校給食センターで購入することは決して不可能ではないと思います。但し問題は、「結果が出るまでに時間が掛かってしまう」という点にあります。野菜等の生ものは当日納品ですから、調理前に検査をしたとしても結果が判った頃には、給食は既に児童生徒の口に入っているのです。「検査をして汚染が発見されたらそれを除去する」食の安全確保という意味では、そうしたしくみが必要なのですが、食事をした後に結果が判るということでは「検査をしてくれている」という点での[安心]の確保にはなっても[安全]の確保には繋がりません。
    今回の視察を終えて、刈谷市としての対応はどうあるべきか、私としても悩ましいところであります。食の[安全]と[安心]・・・市民に[安心]を提供するということも給食を調理する行政の務めでもあるはずです。一方で、万が一喫食後に「先ほど食べた食材の一部が放射能に汚染されていた」ということが判ったとしても、それは逆に市民[不安]を与えてしまうことにならないだろうか?
    但し、測定結果が僅か数分で出るように機器の能力が上がっていれば問題はない訳ですから、そういった点を調査すると共に、父兄の声も今後更に聞いて自分なりの答えを導き出した後に行政に対しての提案をして行きたいと思っています。

  4. 静岡県島田市 環境調和型の学校施設と環境教育について

    この島田市では、平成15年11月に改築完成した島田第一中学校を実施に見学させてもらいました。校舎の特徴としてはユニバーサルデザインのほかに環境に配慮した学校施設(エコスクール)として太陽光発電・雨水利用システムが整備されているほか、出来る限り木材を使用して、暖かみのある学校を目指した建設がされていました。太陽光発電設備は発電量20Kwで工事費約2100万円、その内の1/2をNEDO(通産省の外郭団体:新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの補助金で賄っていました。年間の保守点検料は8〜9万円/年、そのほかには表示パネルやパソコン交換の必要が数年ごとに必要であるとのことでした。この設備で学校全体の電気使用料の14%を賄っている、また中部電力への売電も行なっているとのことでしたが、その金額は年間僅か5500円程度でありました。この島田第一中学校以外にも島田市全体では、小学校18校の内5校において、中学校7校の内3校において太陽光発電設備が施されているとのことで、その発電量も10Kw〜30Kwと様々でありました。設置の目的は[地球温暖化防止への貢献][二酸化炭素の削減効果]といった環境目的のほかに、[環境教育への利用]といった目的も挙げられていましたが、その点については定着せずになかなか難しいようで、費用対効果という面では課題が残っているとのことです。正にその通りで、太陽光発電設備を[環境]と[教育]の2つの視点からだけ設置したのでは費用対効果では問題だと私は思っています。もう1つ[防災]の視点も必要なのではと思います。幸い刈谷市で昨年全中学校の体育館屋根に設置した太陽光発電パネルは蓄電機能も備え、万が一の震災の際、避難所となる学校体育館における夜間照明の確保という目的も持っています。従って、3つの目的を持った刈谷市の場合は費用対効果が高いとも言えます。但し、[防災]としての目的がある以上、小学校についても少しでも早い整備の必要があるのではないでしょうか。今後も予算要望等でその早期設置を求めて行きたいと思っています。