議会運営委員会 視察研修所感

氏名 神谷昌宏

平成23年11月8日(火)〜10日(金)の3日間、議会運営委員会のメンバー8名と正副議長、当局2名の合計12名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 京都府亀岡市 議会基本条例について
  2. 兵庫県養父市 議会報告会について及び議会モニターの導入について
  3. 京都府京丹後市 議会基本条例及び議会報告会について

であります。
現在刈谷市議会では、議会基本条例制定に向けて研究会を開催し、12月議会からは特別委員会に格上げして議論をする予定になっています。そこで、今回は既に議会基本条例を制定している3つの自治体を尋ね、制定に携わった関係者から直接話を聞くことにより制定する際の参考とするために訪問したものです。この基本条例を議論してゆく過程においてポイントとなる項目に[議会報告会][議員間の自由討議][当局による反問権]の3つがあると私は思っています。そこで、視察地ごとにその3項目及び[条例制定までのプロセス]を箇条書きにして、またそれ以外の特徴についても[その他]として触れながら報告します。

  1. 京都府亀岡市 議会基本条例について

  2. [議会報告会]
    定例会ごとに全議員が3班に分かれて実施。3班の編成は9人・9人・8人で所属委員会や会派として偏りがないように+開催地地元の議員は外す。時間は概ね1時間(報告30分+地域の要望を聞く30分) 「議会として報告に来ている」というスタンス
    [議員間の自由討議]
    委員会において当局からの議案説明→採決までの間に、議員間での自由な討議を行なっている
    [当局による反問権]
    議会基本条例が制定された当初は「主旨を問う範囲で反問することができる」となっ ていたが、本年9月議会において「内容についても反問することができる」ように改められた。その結果「代替案として議員さんはどのように考えているか?」といったことを市長が尋ねることも可能となった。
    [条例制定までのプロセス]
    制定までに全部で17回の委員会を実施。各項目については3つの分科会でたたき台を作ってくる。骨子が出来た段階で1ヶ月間のパブリックコメントと7会場での市民説明会を実施。
    [その他]
    前文を策定するのに4回の委員会を開催し、一番の思いが込められているとのことでした。その結果、他市であるような「議会の活性化を計る」といった目的にせずに「市民福祉の向上」を目的にしている点が特徴でありました。また、地方自治法の96条第2項の『議会の議決事項』については、基本計画も議決対象に加えたということで、議会がより政策的な決定に加わることになったとのことでした。 また、議会基本条例の話の前に議会活性化の取り組みについての説明がありました。刈谷市では実施されていない取り組みとしては[行政視察報告書の閲覧公開]ということで、常任委員会・会派での行政視察報告書を議会図書館において公開していました。平成18年4月より各種審議会に議員が出た場合の報酬が廃止されています。[本会議の休日開催]ということで、平成14年12月には日曜議会が、平成22年9月には土曜議会が開催されています。また、平成22年の決算審査からは事務事業評価が実施されていました。

     

  3. 兵庫県養父市 議会報告会について及び議会モニターの導入についてについて

  4. [議会報告会]
    3月議会と9月議会の後に全議員が4班(1班4名)に分かれて実施。6月と12月には独自で開催している会派もある。開催地地元の議員は外すかどうかについては特に意識していない。時間は概ね2時間(議会報告30分+質問30分+地域の要望を聞く1時間) 議員個人の意見であることを断った上で、個人の意見を言うことは出来るが、あくまで基本は議会でオーソライズされたもの。参加者が減少傾向に→決まったことの説明では市民はおもしろくない→住民の期待感とのズレ。市当局もタウンミーティングを実施している(18会場)。「報告会」から「意見交換会」といった色合いが強くなってきている。会場については各班で地域と打ち合わせ。
    [議員間の自由討議]
    委員会において当局からの議案説明→採決までの間に、議員間での自由な討議を行なっている。
    [当局による反問権]
    議員の質問の主旨をより明確にするために、市長等が議員に対して問いただすことを認めている。
    [条例制定までのプロセス]
    制定までに全部で32回の調査を重ねた。骨子が出来た段階で、市民フォーラムを開催すると共に、議会だより・HPに議会基本条例(案)を掲載し、パブリックコメントを実施。
    [その他]
    条例におけるその他の特徴としては、「議会モニター」が設置されていることがあります。定員は20人以内で、公募と団体推薦によって選ばれた方で構成されるのですが、初年度は5名が公募してきましたが、本年度は公募が1名しかなく、その役割や必要性について疑問のあるところです。また、議案に対する各議員の対応を公表するということで、議会だよりに重要議案に対する議員の対応(賛否)が掲載されていました。地方自治法の96条第2項の『議会の議決事項』については、亀岡市と同じように基本計画も議決対象に加えたということです。条文を補うものとして「議会報告会」「市議会モニター」「政治倫理」「議員研修」などについては要綱において具体的な取り決めがなされていました。
  5. 京都府京丹後市 議会基本条例及び議会報告会について

  6. [議会報告会]
    定例会ごとに3班(1班3名)に分かれて6会場で実施。基本的には議員個人の意見を言うことは出来ない。市民からの質問を出来る限り持ち帰らないで、その場で答えるようにしている。そのために、京都府に対する要望の答え等も事前に調べておく。また、予算・決算審査の資料が充実しているため、報告会においてはその資料が非常に参考になるとのこと。
    [議員間の自由討議]
    委員会において当局からの議案説明→採決までの間に、議員間での自由な討議を行なっている。当初は本会議でも実施しようと考えていたが、現実には委員会でのみ実施。議員間討議の結果「賛成→反対」といったように、考えが変わる議員もいる。
    [当局による反問権]
    議員の質問の主旨を聞くだけでなく、市長等が議員に対して中身を聞くことも出来る。市長「あなただったらどうしますか?」の反問もあり。これまでに16名に対して反問した実績あり。議員の中には、自分の主張を発言することが出来るため、市長に積極的に反問するように求める場合もあるとのこと。
    [条例制定までのプロセス]
    制定までに全部で37回の委員会・意見交換会・20回の作業部会=82回の調査。議員全員を対象とした研修会を集中的に実施し、全員のモチベーションを高めると共に、共通の知識レベルへの引き上げ。骨子が出来た段階で、当局との意見交換会やまちづくり基本条例(いわゆる自治基本条例)の制定を求める会との意見交換会、パブリックコメントを実施。
    [その他]
    「議員の役割と任務はどこの法律にも謳われていない→ならば明文化しよう」ということで平成18年9月よりスタートしたこの条例制定の取り組みも、平成19年12月の制定は、京都府内では初の条例制定となりました。地方自治法の96条第2項の『議会の議決事項』については、先の2市と同じように基本計画も議決対象に加えたということで、その結果、基本計画については委員会が110時間行われ、全部で160項目の修正が加えられたとのことでした。政務調査費の支給がないことも特徴の1つであります。
     

    まとめ・・・今回、議会基本条例を制定し、開かれた議会作りを先進的に手がけている3つの自治体を視察して、感じたポイントがいくつかあります。
    1点目は、こうした改革や条例を作るといったことは非常にエネルギーが必要だということです。京丹後市の場合、取り組みを始めた平成18年9月から制定した平成19年12月の僅か16ヶ月の間に、82回もの委員会・作業部会・市民との意見交換会・研修会などが行なわれています。つまり1ヶ月に約5回、毎週1回以上何らかの話し合いがされているのです。そしてそれを引っ張るリーダーの必要性です。今回説明してくださった方々は、議会改革に情熱を注ぎ、始めは改革に後ろ向きであった議員も見事にまとめられました。京丹後市で「始めから全ての議員が、これだけ議員にとって負荷の高い改革に賛成ではなかったでしょう? 決定して行く過程では多数決もあったのですか?」と尋ねたところ、「議員定数削減については多数決になったけれど、条例については全て全会一致でした」と答えられました。全議員にその必要性を納得させるリーダーシップは素晴らしいものがあると思います。一方、議員にとっては、平成18年12月に実施した市民に対するアンケート結果の中で、議会に対して厳しい声が寄せられたことも、改革の必要性に迫られる一因になったのかもしれません。しかしその点で言えば、具体的な改革が行なわれた現在、本年6月に行なった最新のアンケート結果を尋ねたところ「市民の声は余り変化していない」とのことでしたので、やはり改革を判ってもらうのには時間が掛かるということだろうと思います。
    2つ目は私としてはどうしても腹に落とせない(納得できない)点があります。それは「そもそも議会の内容を報告したり市民の声を聞くという活動は、オール議会としてやることなのだろうか?」という事、つまり議会報告会の位置付けについてです。「議会の内容を報告する」とか「市民の声を聞く」という活動は、それこそ議員一人ひとりにとって最も大切な議員活動のベースにあるものであり、個々の議員の責任においてすべきものではないかと思うのです。どれだけ多くの市民の声を聞き、それを政策として実現させるか・・・その評価はそれぞれの議員に4年に1度、選挙という形で下されるのだと思います。そういった意味では、今後の議会基本条例検討特別委員会の中で[議会]としての役割と[個々の議員]としての役割、その2つをきちんと分けて議論する必要性があるのではないかと思っています。亀岡市において、「議員の動き方が変わって」→「議会が変わる」→「市役所が変わる」→「まちが変わる」と言われました。つまり[オール刈谷市議会]を変えようと思ったら、個々の議員の動き方が変わるためのルールやしくみ作りが大切だということです。そういった点に留意しながらの条例作りを手がけて行きたいと思っています。そして、議会基本条例を制定すること自体が目的になってしまわないようにするためには、その条例で謳ったことを具体化するための要綱等を同時に考え、条例を実効性のあるものにして行かねばならないと強く感じました。最後に改めて、亀岡市で聞いた「議員の動き方が変わって」→「議会が変わる」→「市役所が変わる」→「まちが変わる」・・・この言葉で所感の結びとします。