視察研修所感

氏名 神谷 昌宏

平成25年2月5日(火)〜7日(木)の3日間、志誠会のメンバー2名と公明クラブのメンバー2名の合計4名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 山口県下関市 債権回収指導室の取り組みについて
  2. 広島県広島市 災害に強い機動性のある水道システムについて
  3. 兵庫県明石市 不登校早期対応システムについて
  4. であります。

以下、視察地ごとに報告します。

  1. 山口県下関市 債権回収指導室の取り組みについて
  2. 刈谷市においても市税や国民健康保険税、市営住宅の使用料、学校給食費などの債権の回収率を上げることは大きな課題となっています。そうした中、今回視察した下関市においては債権回収についての問題意識を共有して、回収するためのスキルアップを図るために債権回収室が設置されていました。

    その設置までの経緯は・・・平成14年度の行政監査による指摘や市議会からの要望等により、市債権を適正に管理させるための管理体制の整備を目的として、平成15年に債権管理委員会が設置されました。当初は総務部総務課に事務局を置いていたのですが、その後、債権回収を一層強化する必要性が高まり、平成22年度に債権回収指導室を、債権回収に特化した部署である財政部納税課に設置し、それに伴い、債権管理委員会の事務も債権回収指導室で所管することとなったとのことです。

    メンバー構成は・・・副市長が委員長を務め、各部局長級の委員18名が委員となっています。

    業務としては・・・債権の管理及び税以外の債権の回収に係る[収納率向上アクションプラン(強制徴収債権)][債権管理マニュアル][債権管理カルテ]などをそれぞれの課が作成する際の指導・助言を行なったり、研修会等の開催として[滞納整理のための実務者研修会(年2回)][未収金回収のための学習会(24年度年4回)]などを実施していました。

    これまでの効果としては・・・債権回収に主眼を置いた体制が出来、収納率向上アクションプラン(強制徴収債権)などを各課が作成することにより、全庁的に債権回収に向けた意識を向上させることが出来たとのことです。また、これまでは回収について相談する場所がなかったが、これが出来たことで回収のためのスキルアップに繋がったとのことでした。そしてそうしたことにより滞納額の削減に繋がっていました。

    今後の課題としては・・・現状では専任職員がいないため、指導・助言に関する業務などにおいて支障を来たしているとのことです。また、徴収努力をしても回収不能な債権が存在しているのも事実であり、今後は時効が完成しても消滅しない債権(私法上の債権)等を適切に管理するため、債権の放棄を規定した債権の管理に関する条例の制定が必要であると考えておられました。今回、視察をする前に下関市の[債権回収室]の存在を知り、私はてっきり「直接債権を回収に行く組織」だと思っていました。しかし実際は、あくまでも指導・助言・研修などの機会を用意することで関係部署と職員の意識向上と回収率の向上を図る組織であることを知りました。今後は、更に効率的に債権回収を進めるためにも、債権を一元管理して徴収する組織についても検討する必要があるのではないかと思いますし、刈谷市においても同様のプロセスで、先ずは指導・助言・研修を行なう場作りが必要なのかもしれないと感じました。

  3. 広島県広島市 災害に強い機動性のある水道システムについて
  4. 広島市水道局では、災害に強い水道システムを作り上げるために次のような災害対策に取り組んでおられました。

    (1)災害時でも水道水を安定的に供給する
      施設の耐震化・・・

    浄水場や配水池の耐震化
    水道管の耐震化
      バックアップ機能の強化・・・




    配水ネットワークの整備
      ・浄水場間の連絡
      ・配水幹線の相互連絡
    非常用電源設備の整備
      ・停電に備えた自家用発電設備の設置

    (2) 迅速な応急給水と応急復旧を実現出来る体制を整える
      応急給水対策の推進・・・






    応急給水量の確保
       ・主要配水池への緊急遮断弁の設置
       ・避難場所への飲料水兼用型耐震性
        防火水槽(消防局と連携)の整備
     応急給水設備の整備
       ・給水タンク車、ポリ袋等の整備
      災害直後の速やかな対応・・・



    相互応援体制の充実
      ・他都市との応援体制の確立
    人材の育成
      ・災害対応訓練や配管研修の実施

    こうした施策について、担当の職員より初めにパワーポイントで説明をして頂いた後、実際に様々な器材の使用例を見せて頂く事が出来ました。[給水タンク車][折り畳み式水槽][仮設水槽][可搬式応急給水栓][災害用ポリ袋][ポリ容器]そして、水道局の敷地の地下に設置されている[100トン型の耐震性貯水槽]などです。今回の説明を受け、災害に対する予防段階での取り組みと発生後の対策が、車の両輪の如く整備充実していることを感じました。
    しかしお恥ずかしい話、私自身刈谷市における取り組みを詳細に把握していないのが現状です。今回の広島市での実例を、刈谷市と比較する際の1つのものさしとして、一度刈谷市の現状も確認してみようと思います。また、今回の広島市での視察においては、視察を受け入れる側の市職員対応の大切さも実感しました。今回の広島市消防局さんには、懇切丁寧な説明の上、実際に器材を使っているところを寒い中、数人の職員さんが対応して見せて下さり、とても参考になりました。心より感謝申し上げると共に、逆に刈谷市が視察者を受け入れる際にもぜひそうした懇切丁寧な対応を心がけて頂きたいと感じました。

  5. 兵庫県明石市 不登校早期対応システムについて
  6. 明石市においては、小中学校の在籍に対する不登校の割合が、国・県の平均を上回り重要な教育課題となっていました。そこで、平成20年度から全小中学校に「不登校予防のための早期対応システム『ストップ不登校あかし』」を導入しました。

    具体的には、[欠席1日目の児童生徒には電話連絡]→[連続欠席2日目に家庭訪問][断続欠席2〜6日目に電話連絡や家庭訪問]→[連続欠席3日目/断続欠席7日目にいじめ対策課にFAX]というものでこのシステムの特徴は、現場の教師が児童生徒の欠席に敏感になり、いち早く不登校の予兆に気付き、早期対応することで不登校の予防を図るというものです。また、児童生徒への対応を担任の先生に任せておくと、先生の力量(経験)によって立ち直りへの違いが出てしまったため、学校あるいは教育委員会全体で問題を共有しようという取り組みです。従って、「家庭訪問は担任の先生が行なうもの」といった固定的な考えは改め、教師から送られてきたFAXに対しても臨床心理士が返信を送り担任の先生や対象学校をサポートする仕組みが構築されていました。その他、不登校対策研修会が平成24年度には3回実施され、各学校の不登校担当者が事例研修や情報交換がなされていました。

    こうした予防的な取り組みのほかに、不登校になってしまった児童生徒に対する取り組みとしては、明石適応教室[もくせい教室]がありました。市域49平方キロ強と刈谷市とほぼ同じ広さの明石市において、こうした教室は1箇所だけとのことでしたから、北・中・南部にそれぞれ一箇所ずつ設置している刈谷市の方がこの点ではより充実していると言えるのではないかと思います。

    不登校を減らすために教育委員会全体で取り組む姿勢としてもう1つ感心したのは、教育委員会が教師向けに発行している『ストップ不登校あかし にゅーす』です。別添のように毎月、その季節ならではの不登校発生要因を分析して、教師の不登校対応への参考としている情報誌です。
    説明の最後に課長さんが「不登校が一朝一夕に減るものではない。5年〜10年というスパーンで考えるべきだ」と言われました。正に、そうした長いスパーンで対応して行かなければいけない課題については、一人ひとりの教師の力量でできるものではありません。そういった点では、今回の明石市のように組織全体で1つの問題解決に取り組むという姿勢は見習うべきものがあると感じました。