視察研修所感

志誠会 神谷 昌宏

平成25年11月12日(火)〜13日(水)の2日間、志誠会のメンバー2名と公明クラブのメンバー2名の総勢4名で行政視察に行って参りました。本来は2泊3日で3項目の視察予定だったのですが、私は翌14日に副議長としての公務が入っていたため他のメンバーとは別行動で私は2日間、2個所のみの視察となりました。

視察項目は

  1. 石川県金沢市 金沢駅西広場再整備の概要について
  2. 福井県敦賀市 敦賀スタンダードカリキュラムについて
  3. の2項目です。

それぞれの項目毎に報告いたしますと

  1. 金沢市 金沢駅西広場再整備について
  2. この日、金沢市は終日雨降り。そうした中、今回の視察は市役所などの建物内での説明ではなく、「現場を見る」と言う趣旨で、駅西広場のベンチでの説明でありました。私も過去14年間様々な自治体に行政視察に出かけていますが、視察の間一度も会議室に入ることなく全て現場(屋外)で説明を受けるということは初めての経験であります。しかし「現地・現場・現物の大切さ」という点では非常に意義のある視察であると思います。

    駅の東広場が歴史都市金沢の玄関口であるのに対して、今回視察した駅西広場は新しい金沢の玄関口として位置づけ、平成26年度末に北陸新幹線が開業することに合わせ、西口広場約27000uを次のような基本方針で再整備がなされていました。

    @ 西地域の玄関口としてふさわしい広場の顔づくり
    A 適正な施設規模の確保、安全で快適な交通機能の充実
    B 人や環境にやさしい広場の整備

    そして、こうした基本方針の下、様々な特徴的な取り組みがされていました。
    駅東広場が建物中心であるのに対して、駅西広場は広いスペースを有効に使い明るく開放的な空間で、駅の歴史や昔の金沢の風景、職人技などが随所に感じられるデザインになっていました。具体的には、ハスやスイレンなどの植物により駅周辺の原風景を表現したこと。竹林などの和の雰囲気を表現したこと。四季折々の花や実、紅葉が楽しめる花壇。格調・質感を持ちながらフラットなデザインであることなどです。

    現在刈谷市においては、駅南口の大型再開発は終了し、現在は民間による優良再開発とそれに伴う歩道・駅広場の整備等が行われています。また北口においては、アーバンフェイス事業は終了し、「道づくり」を切り口としての交通まちづくりのワークショップが行われ、北口広場及び道路等のあり方が刷新されようとしています。今回の金沢市の事例を見て思うことは、北口・南口どちらの再整備についても所謂「刈谷らしさ」をもう少し入れ込んだ方が良いのではないかということです。「和」を大切にした歴史のまち=金沢市に対して、工業のまち=刈谷市としての特徴、具体的に直ぐに何をということは思い浮かびませんが、整備して行く中の細かなデザインにそうした思想を入れ込むことは可能なのではないかと思いました。

    また、この金沢駅は1日の乗降客が4万数千人ほどであるとのことでした。人口約45万人の市でこの乗降客です。一方、刈谷市は乗降客約8万人とも言われています。この「にぎわい」というせっかくあるポテンシャルな魅力を有効に使わなければいけないと感じました。

  3. 福井県敦賀市 敦賀スタンダードカリキュラムについて
  4. 昨日の100%屋外での視察研修が初めての経験ならば、この敦賀市での視察においても初めての経験がありました。それは、今回の視察項目についての説明を全て教育長さんが自ら行ったということです。通常、教育長は冒頭の挨拶だけされて、後の説明は担当者が行うか、あるいは自治体によっては教育長は挨拶を含め全く来られないというところがほとんどなのですが、今日の説明・質疑応答は全て教育長がされました。話を伺って思ったことは「教育長には、それだけこのカリキュラムに対する強い思いがあるのだろう」ということです。

    敦賀スタンダードとは、国が策定する学習指導要領の方針・目標・内容等は確実に実践をした上で、敦賀市の自然・歴史・文化・産業など特徴のある内容を織り込むことによって「敦賀っ子」としての誇りとふるさと意識の高揚を図ろうとするカリキュラムです。
    各教科毎に具体的に敦賀の特徴を列挙しますと・・・

    社会=歴史 〜港 鉄道〜
    ・北前船、舟川、歴史に残る戦い
    ・古く渤海国との交流→松原客館
    ・井原西鶴:日本永代蔵→「北国の都ぞかし」
    ・日本海側初の鉄道 敦賀⇔長浜
    ・欧亜定期航路→敦賀⇔ウラジオストック間
    ・欧亜国際連絡列車 日本とヨーロッパを結ぶ日本のゲートウェイとしての港
    ・歴史上の人物は枚挙にいとまがない
    ・地域に残る伝統、文化財(有形・無形)
    国語=文学者・作家・詩人 等
    ・松尾芭蕉「奥の細道」、高浜虚子
    ・橋本進吉(国文法の生みの親)
    ・桑原武夫(フランス文学者)⇒桑原隲蔵(東洋史学)
    ・芥川龍之介「芋粥」⇒藤原利仁
    ・藤原定(詩人)
    理科=環境、エネルギー教育、豊かな自然
    美術・工芸=橋本三大(長兵衛:日本画)一宮長常(装剣金工)
    道徳=ムゼウム(杉原千畝「命のビザ」)
    家庭科=食文化 食育 大塚末子
    総合的な学習=地域学習

    などです。質疑応答の中で「こうした地域の特徴を取り入れたカリキュラムは数学や英語では作り難いのでは?」と言う質問をしたところ「英語においては敦賀市の紹介を英語で表現したり、数学では使用する数字を敦賀市の各種統計の数字を引用するなどして、数学や英語でも出来る限り敦賀色を出すように努めている」とのことでした。

    本年刈谷市では刈谷城築城480年、天誅組義挙150年を祝うイベントを行っています。その際、市長がよく言われる言葉に「歴史を学ばなければ今を語れない 今を学ばなければ未来は語れない」というものがあります。今回の敦賀市の取り組みを聞いていて、この言葉に通ずるカリキュラムだなと思いました。子どもの頃から自らが生まれ育ったふるさとの歴史や伝統・文化・産業をきちんと教える事、そのことがその自治体の未来を担う人づくりには不可欠のことなのだという強い思いを今回の視察で持つことが出来ました。そしてそのことは単に学校教育だけで行ったのでは効果が薄れてしまいます。子どもが家庭で家族と話題が共有出来ることが大切ですし、更に広げて地域、あるいは社会全体が「自らのふるさとについて知ろう、学ぼう」という意識が高まることが重要であると思います。そういった意味では質疑応答の中でも発言させて頂きましたが、学校教育と同時に生涯学習との連携、あるいは地元自治区や商店街との連携といったことも必要になって来るのではないかと思いました。いずれにしても、教育長の情熱のこもった非常に素晴らしいカリキュラムでありました。