自民クラブ 視察研修所感

氏 名 神谷 昌宏

平成27年11月9日(月)〜11日(水)の3日間、自民クラブのメンバー4名で行政視察に行って参りました。視察項目は・・・

視察項目は
  1. 長崎県大村市 中小企業振興基本条例について
  2. 長崎県諫早市 議会基本条例の検証について
  3. 長崎県長崎市 観光イルミネーション事業について
であります。
 初日は少し雨もぱらつきましたが、視察に影響を及ぼすほどではなく、3日間共比較的良い天気で、いずれの調査項目も非常に密度の濃い内容で行うことができました。特にBの観光イルミネーション事業については、2泊とも長崎市内に宿泊した関係で、空いた時間には実際に現場を見ることができ、市役所内で受けた研修の予習・復習が出来る様なかたちになり、非常に充実した3日間となりました。
  1. 長崎県大村市 中小企業振興基本条例について

  2.  [中小企業振興基本条例]については過去2回、その制定を一般質問で要望してきましたが残念ながら実現に至っていません。そこで現在、議員提出議案として制定を目指そうと言うことで議会運営委員会に提案をしています。今回は既に制定されている大村市がどのような目的でどのような手法で制定をしたかに特に注目をして視察に臨みました。

    刈谷市において[中小企業振興基本条例]を今までのところ制定していない理由は先の9月議会の答弁に拠ると次のようなものです。「総合計画において本市の特性に合った中小企業、あるいは商工業の振興に関して進めるべき施策の内容、行政と事業者の役割等が定められており、他の計画等との整合性を図りながら継続的に推進している」つまり、あえて条例を制定しなくても、総合計画の中で条例で謳われるような内容のことが書かれ、それに沿って具体的な施策を充実させているので、それで十分ではないかというものです。これに対して大村市が、施策の充実だけで良しとするのではなく、敢えて条例という形をとることの意義として大きくは次の2点であるのだと言う事を担当者の話を聞いていて感じました。

    @大村市自身が「中小企業や地域の産業を振興するのだ」という立場を何より市の内部(役所や職員・議員)に対して明確にすることで、政策を進めて行く上での支え(拠り所)となる点です=具体的な事業を行う上でこの条例が後ろ盾になる(錦の御旗)→各種事業がやりやすくなる→予算が取りやすくなる
    A大村市が総力を挙げて中小企業政策に取り組むという強いメッセージを発信し、市がどういう方向で政策を進めようとしているのかを示すことで、意欲のある中小企業が新たな展望を切り開くことが出来るようになる。

    この点は、私も先の一般質問で強調したところであり、大村市担当者の話を聞いて意を強くしたところです。特に@については、中小企業振興施策の担当課にとっては、この条例があることでむしろ仕事がやりやすくなると思います。

    次に私が今回の視察で注目していた2つ目のポイント「どのような手法で制定をしたか」でありますが、私は以前から「既に制定しているどこかの自治体の条例をコピーするのではなく、中小企業者から生の声を聞いて、その声を反映させた刈谷市らしい(独自の)条例を作るべきだと主張してきました。この点、大村市は正にそのような手法を取られての制定だったと言えます。

    大村市では平成23年12月に大村市中小企業振興基本条例制定推進協議会が設立されました。この会は商工会議所が事務局となり、ワーキング会議や市内業者との意見交換会など8回の会議を重ね、平成24年10月に条例案を作成、平成24年11月条例の早期制定についての要望書を市に提出、市はその条例案をたたき台として平成25年12月に条例を制定したのです。つまり、私が主張している「中小企業者から生の声を聞いて、その声を反映させた独自の条例を作る」という作業を商工会議所が中心になって進めていたのです。

    そして、条例制定の成果として「中小企業振興会議が行われるようになったこと」を挙げておられました。この会議は、中小企業の代表者・中小企業団体の代表者・大企業の代表者・学識経験者・公募による市民・関係行政機関の職員・市職員・その他市長が必要と認めるもので構成される委員25人以内をもって組織する会議です。この会議によって、中小企業関係者が1つのテーブルに付くことによって、業種ごとの課題の把握ができ、共通の認識と取り組むべき方向性が見えてきて、回数を重ねるに従って本音で語ることが出来るようになったとのことでした。そして、この会議での施策の見直しが行われたり、(仮称)大村市産業支援センターが設立されるなどの新たな動きも出てきました。

    大村市の条文の中を見てみますと「工事の発注、物品・役務の調達に当たり、中小企業者の受注機会の増大に努めること」といった公共事業の優先発注について謳われていたり、大企業の役割として「市が実施する中小企業振興施策に協力するよう努めるものとする」といった内容や、「市は、中小企業振興施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする」といった、具体的に中小企業施策を計画しようとするときに後押しとなる非常にインパクトの大きな条文など、私が一般質問でポイントとして取り上げた点がいくつか条文として取り入れられていました。

    日本経済は大企業による牽引と中小企業による押し上げによって発展して行くのだと思います。そして、中小企業の一番近くにいるのは基礎自治体であり、中小企業支援は自治体の責務であると思います。各種施策充実のためにも中小企業振興基本条例の制定が急務であることを改めて強く感じた大村市での視察でありました。

  3. 長崎県諫早市 議会基本条例の検証について

  4.  刈谷市では平成23年12月より議会基本条例検討特別委員会が設置され、26回の委員会を経て平成25年9月定例会において制定され、10月1日より施行されました。「議会の活性化」「市民に開かれた議会」「市民から信頼される議会」を目指し、全20条から構成されています。新たな取り組みとしては「議員間討議」「反問権の付与」「請願提出者の意見陳述の機会の付与」などがあり、「議員間討議」以外は既に行われた実績もあります。この刈谷市議会基本条例制定時の委員長が今回同じ会派のメンバーとして視察に同行した加藤賢次議員であり、私も制定までの議論の中で一時、委員長として携わって来ました。その二人が以前から話していたのが「施行されて2年。この条例で謳われていることがきちんと行われ、実現できているかどうかの検証と、逆に、条例自体の見直しもどこかで行う必要があるのではないか」と言うことです。そのように思っていたところ、諫早市において「議会基本条例の検証が行われている」ことを知り、視察させていただくことになったのです。

    検証のやり方としては、議会基本条例の目的の達成度合いを43項目に分けて、A〜Dランクで先ず会派ごとに検証、その結果を議会運営委員会に持ち寄って大村市議会としての評価をA〜Dランクで表し、その結果をホームページで公開するというものです。そして評価の低いものについては[直ぐに取り組む事項]と[今後の研究課題とする事項]に分け、それぞれ改善を行い、約1年後に前回と同じ手順で2回目の検証を実施しました。その結果、前回の評価と比較して4項目が評価アップとなったとのことです。そして、こうした議員同士による内部からの評価だけではなく、専門的知見の活用ということで、第三者の客観的な評価も求めることとして、諫早市とまちづくり協定を結ぶ長崎ウエスレヤン大学に委託をして評価を求めていました。このように2度の内部評価に加え、外部評価の実施により議会基本条例に謳われていることの実現度は着実にアップしているようですが、謳われていることがなかなか実現できない課題としては、「議員の政策提案・政策条例提案」という点にあるようで、今後は提案していくためのルールづくりも必要と感じているようでした。

    今回は視察目的である[議会基本条例の検証]以外にも諫早市が取り組んでおられる各種議会改革についても説明を頂きました。様々な議会改革に取り組んだ結果、早稲田大学マニフェスト研修所が行っている[議会改革度調査2014]で諫早市のランキングは長崎県内13市中1位になったとのことです。また全国では調査回答1503(都道府県・市区町村の84%にあたる1503自治体が回答ヲ自治体中129位であり、これは2012年の502位、2013年の249位からの大躍進と言えると思います。

    今回は諫早市が議会基本条例を「検証」しているという点に着目しての視察でありましたが、何事もやりっぱなしにするのではなく「検証」→「改善」→「再検証」→「再度改善」・・・こうした流れを作ることが議会の質を高めることに繋がるのだと改めて感じました。

  5. 長崎県長崎市 観光イルミネーション事業について

  6.  今年で開園11年目を迎える刈谷ハイウェイオアシスは年間の来場者が800万人を超え、全国のテーマパークの中では、東京ディズニーランド・大阪のユニバーサルスタジオジャパンに続いて第3位、全国のサービスエリアの中では神奈川県の海老名サービスエリアに続いて第2位の集客を誇っています。地元経済に与える波及効果や雇用の創出も大きく、また刈谷市の名前を全国に発信することに大いに貢献しています。人口減少社会が進むことにより[交流人口の拡大]がどの自治体でも急務になっています。その[交流人口の拡大]策のひとつが観光振興であり、今回は観光を市の大きな産業と捉えてあらゆる施策に取り組んでいる長崎市を訪問しました。

    平成26年長崎市観光の状況と効果は、試算によると・・・
    ●観光客数 631万人
    うち 日帰り客数 357万人
    宿泊客数  274万人
    ●観光消費額 1243億円(推計)
            (飲食店・宿泊・商業・飲食料品・運輸等)
    ●27年度観光予算
          約15億1000万円(一般会計)
          約 6億2000万円(特別会計)

    平成16年度の観光客数が493万人ですからこの10年間で約1.3倍に伸びたことになります。しかし経済効果の大きい宿泊客数の伸びはそれほどではありません。そこで力を入れて取り組んでいるのが「如何に宿泊客数を伸ばすか」ということであり、そのための手段として「夜型イベントの充実」ということがありました。「夜のイベントを楽しむ=宿泊をする」という考え方です。

    もともと長崎は「夜景が美しい都市」として知られており、その強みを更に磨き上げていくことに力点が置かれました。具体的には・・・
    1.夜景そのものの魅力向上
       長崎の夜景の特性を活かし、夜景そのものの魅力を向上させる  
        (斜面地の街路灯照明の整備、夜景マスタープランづくり) 
    2.観光施設、公共施設等による夜間景観の構築
       観光施設や公共施設等は各視点場からの見え方を意識すると共に、歩いて楽しめる魅力ある夜間景観を構築する
        (稲佐山山頂電波塔ライトアップ、観光施設ライトアップ等)
    3.視点場の整備
       夜景を快適に観賞できる空間の整備や環境の創出を図る
        (稲佐山山頂アクセス改善、鍋冠山展望台の整備等)
    4.観賞メニューの充実
       夜景観光のオプションとして選択できる観賞メニューの充実わ図る
        (夜景ツアー、夜景ナビゲーター養成等)
    5.魅力あるイベントの開催
       夜景をPRできる夜景イベントの開催や既存イベントとの連携を図る
        (長崎ランタンフェスティバル、長崎クリスマス等)
    6.誘客・宣伝の強化
       長崎の夜景の魅力を広く発信し、誘客へつなげる
        (各種媒体によるPR・誘致、長崎夜曲の活用、HTB連携等)

    こうした施策面での強化に加えて、観光を担当する職員数の充実ぶりにも驚きました。文化観光部(約60名)は6つの課で構成されており「観光」と名がつく課としては観光政策課=12名、観光推進課=11名で観光施策に当たっておられました。

    今回の長崎市視察で感じたキーワードとしては「強みに更に磨きをかける」「そのための人の充実」ということです。振り返って我が刈谷市は・・・ 観光といっても特に風光明媚な所がある訳でもありません。であれば意識的に「観光」となりうる素材を磨いて行く必要があります。それは1つにはトヨタ系企業を初めとする最先端の「産業」であり、もう1つは亀城公園再整備や歴史博物館建設などに象徴される「歴史や文化」などではないかと思います。そしてそれらの磨き上げに向けて、更なる担当職員数の充実→組織改変そういったことも必要なのではと思います。